<新興国eye>ブラジル中銀、予想通り金利据え置き―長期据え置きを示唆

新興国

2023/5/9 8:57

 ブラジル中央銀行は先週(3日)の金融政策決定委員会で、インフレとの戦いが長期化する見通しを示した上で、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を現行の13.75%という高水準に据え置くことを全員一致で決めた。据え置きは市場の大方の予想通りだった。

 中銀はインフレの急加速を受け、21年3月会合で15年7月以来、5年8カ月ぶりに利上げに転換。22年8月会合まで12会合連続で利上げを実施、利上げ幅が21年3月以降で計11.75ポイントに達したことを受け、同9月会合から現状維持に転換した。金利据え置きはこれで6会合連続。政策金利は16年12月(13.75%)以来6年5カ月ぶりの高水準となっている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、政府の利下げ要求に屈せず、金融引き締め的な高水準の現行金利を据え置いたことについて、前回3月会合と同様、「国内のインフレ率は全体指数もコア指数のいずれも物価目標を上回っている。インフレ予測に対する上振れ・下振れの両リスクが残されたままだ」とした上で、「現在のシナリオ(インフレ予測)では、インフレ期待が悪化(上昇)、ディスインフレ(インフレの低下)ペースが鈍化する見通しのため、一層の注意を払う必要がある」と、インフレ悪化懸念を強調、政策金利の据え置きを決めたとしている。

 インフレ見通しについて、中銀は今回の会合でも23-24年の年間インフレ見通しを据え置いている。中銀は声明文で、「23年のインフレ率は5.8%上昇(前回会合時も5.8%上昇)、24年は3.6%上昇(同3.6%上昇)と予想している」とし、24年も物価目標を超えると予想している。ちなみに、中銀の物価目標は23年が3.25%上昇、24-25年は3.00%上昇。

 他方、政策金利が一定で変わらない場合の別の予測では、23年が5.7%上昇(同5.7%上昇)、24年は2.9%上昇(同3.0%上昇)と予想、24年のインフレ率は物価目標に収束すると予想している。このため、市場では中銀は6年ぶりの高水準にある政策金利を当面、据え置くと見ている。

 今後の金融政策については、中銀は前回会合時と同様、「政策金利を十分に長期間維持する戦略がインフレの収束を確保する上で十分かどうかを検討しながら、引き続き警戒を続ける」とし、当分の間、現状維持を続けたい考えだ。また、中銀は、「ディスインフレ(物価上昇率の低下)のプロセスが定着するまで現状維持を続ける。現在のシナリオでは金融政策の実施では忍耐と平穏が必要と判断している」とも述べている。

 また、中銀は、「現在のシナリオでは、金融政策の運営にあたっては忍耐と冷静さが必要だ」とした上で、「可能性は低いシナリオだが、ディスインフレプロセスが期待通りに進まない場合、金融引き締め(利上げ)サイクルの再開を躊躇しない」とし、インフレとの戦いが長期戦になるとの認識を示している。インフレ率が25年まで物価目標の水準を上回ったままとの経済予測が背景。他方、市場では現在の金融引き締め的な政策金利が当面維持されても、6月には利下げに転換すると予想している。最近の欧米の銀行危機による経済への悪影響や、ルラ政権が6年ぶりの高水準にある中銀の政策金利を引き下げるよう中銀に要求していることが背景。

 次回の金融政策決定会合は6月21日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ボベスパ<1325.T>、上場MSエマ<1681.T>、上場EM債<1566.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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