<新興国eye>ロシア中銀、予想通り据え置きもタカ派姿勢を維持―インフレ加速で再利上げに含み

新興国

2023/6/12 9:19

 ロシア中央銀行は先週末(9日)の金融政策理事会で、インフレ加速リスクを警戒する中、主要政策金利である資金供給のための1週間物入札レポ金利と資金吸収のための1週間物入札預金金利を7.50%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。

 中銀はロシア・ウクライナ戦争の勃発(22年2月24日)と、それに伴う西側の対ロ経済制裁により、インフレ圧力が一段と高まったことや、ルーブルが一時30%も急落したことを受け、22年2月28日の臨時会合で、主要政策金利を9.50%から一気に20.00%に引き上げた。しかし、同4月の臨時会合から景気を支援するため、利下げサイクルに転換。利下げ幅が計12.50ポイントに達し、ウクライナ戦争開始後の緊急利下げ分(10.50ポイント)を大きく上回ったことを受け、同10月会合から金利据え置きに転換した。現状維持はこれで6会合連続。

 中銀は会合後に発表した声明文で、金利を据え置いたものの、「現在のインフレ率はコア指数も含め上昇が続いており、家計部門と企業のインフレ期待は依然、高水準だ」とした上で、「6月5日時点のインフレ率は前年比2.6%上昇と、4月の同2.3%上昇(3月は3.5%上昇)を上回り、インフレ率はこれまでの抑制された水準から(ベース効果により)伸びが加速し始めている」、また、「中期のインフレ見通しに対するリスクバランスは、さらに上振れリスクとなった」とし、警戒感を強めている。

 市場では中銀が今回の会合で据え置いたのは、インフレ加速の兆候が出始めたばかりのため、利上げを待つ余裕がまだあると見ている。しかし、今後、インフレ率が物価目標(4%上昇)を上回ってもすぐには利上げせず、少なくとも数カ月据え置いたあと、9月から利上げに転換する可能性があると見ている。

 中銀は今後の金融政策の見通しについて、「インフレ圧力が徐々に高まっていることを踏まえ、中銀は24年以降もインフレ率を4%上昇近辺で安定させるため、次回(7月)会合で主要金利を引き上げる可能性を残している」との文言を残し、利上げ再開の可能性に含みを残している。市場では中銀はタカ派(インフレ重視の強硬派)姿勢を変えていないと見ている。

 今後のインフレ見通しについては、中銀は、「22年5-10月のインフレ率が前月比で低い伸びとなっているため、今後、インフレ率は(前年同月のインフレ率が低かったため高めの数値が出る)いわゆるベース効果で前年比の伸びが加速する」としたが、「金融政策スタンスを考慮すると、インフレ率は23年に4.5-6.5%上昇となり、24年には物価目標の4%上昇に戻る」と、前回会合時での予想を据え置いた。

 インフレ加速リスクについて、中銀は前回5月会合時と同様、「(西側による)貿易・金融制裁の強化がロシアの輸出品に対する需要をさらに弱め、その結果、為替相場の変動(通貨ルーブル安)を通じ、インフレを加速させる可能性がある」とし、ウクライナ戦争をめぐる西側の経済制裁の強化がインフレ上振れリスクと指摘。また、「財政赤字が想定よりもさらに拡大した場合、インフレ上振れリスクが高まる」とし、その上で、「24年にインフレ率を物価目標に戻し、その後、4%上昇近くで維持するには金融政策の引き締めが必要になる可能性がある」と警告している。

 さらに、中銀は前回会合時と同様、労働市場のひっ迫も依然、インフレリスクと指摘。ウクライナ戦争の拡大に伴う30万人の兵士動員や国外脱出の増加により、労働者不足に陥っているためだ。中銀は、「一部のセクターでは労働力が不足しており、実質賃金の伸びが労働生産性の伸びを上回る可能性がある。(このため)労働市場によるインフレ上振れリスクが続いている」と警戒している。

 次回の定例会合は7月21日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 RTS連動<1324.T>、WTI原油<1671.T>、ガス<1689.T>、

 原油<1690.T>、野村原油<1699.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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