RBA、政策金利を据え置き―景気リスク考慮も追加利上げの可能性を残す

経済

2023/7/4 16:25

<チェックポイント>

●ロウ総裁、「据え置きは経済の見通しが不透明であることも考慮した」

●ロウ総裁、「物価目標を達成するため、さらなる金融引き締めの可能性がある」

●市場、タカ派姿勢変わらず次回8月で追加利上げを予想

 豪準備銀行(RBA、中銀)は4日の理事会で、インフレ加速を阻止するため、政策金利であるオフィシャルキャッシュレート(OCR、銀行間取引で使われる翌日物貸出金利)の誘導目標を4.1%に据え置くことを決めた。金利水準は依然、12年4月以来の高水準となっている。市場の大方の予想通りだった。

 RBAは22年5月会合で、インフレ抑制のため、11年半ぶりに利上げに転換、今年3月会合まで10会合連続の利上げを実施したが、利上げ幅が計3.5ポイントに達し、34年ぶりの大幅引き締め状況となったため、4月会合で利上げサイクルを一時停止した。しかし、5月会合で前回6月会合でも22年5月以降で12回目となる追加利上げを実施、利上げ幅は計4ポイントとなっている。今回の据え置きは4月会合以来、2回目。

 据え置き決定について、ロウ総裁は「22年5月以降、政策金利は4ポイント引き上げられたことにより、経済の需要と供給の持続可能なバランスが確立され、今後もそのバランスは続く」と、これまでの累積的な利上げのインフレ抑制効果が今後も期待できると指摘。また、「それに加え、経済の先行きの見通しが不透明であることも考慮した」とし、累積的な利上げが景気に及ぼす悪影響にも配慮し、据え置いたとしている。

 今後の金融政策について、ロウ総裁は今回の会合でも利上げサイクルの継続(追加利上げ)の可能性に含みを残した。前回会合時と同様、「特に、経済全体の生産余剰(spare capacity)が限られていることや、依然、(約50年ぶりに)非常に低い失業率を考慮すると、高インフレ期待の長期化が物価と賃金の両方の大幅な上昇に寄与するリスクを警戒している」とし、その上で、「今後も人件費の動向と企業の価格設定行動(価格転嫁)の両方に細心の注意を払う」と警戒感を維持している。

 また、総裁は今回の会合でも「インフレが妥当な時間内で物価目標に戻ることを確実にするため、金融政策のさらなる引き締めが必要になる可能性がある。それは経済とインフレの動向次第だ」との文言を据え置き、利上げサイクルの継続の可能性を示唆。その上で、「理事会はインフレ率を2-3%上昇の物価目標の範囲内に戻し、経済を安定させるようとしているが、このバランスを達成する(ソフトランディング)までの道は狭い」としている。その根拠として、総裁は、「依然として大きな(経済の)不確実性の要因は家計消費の見通しだ。金利上昇と生活費の圧迫が重なり、家計支出の大幅な減速につながっている」とし、個人消費支出の低迷を挙げている。

 市場では、今回の据え置きはロウ総裁が行き過ぎた利上げによる景気後退リスクを警戒し、経済のソフトランディング(緩やかな調整)の道を模索しようとした決定と見ている。しかし、総裁が引き続き、インフレ抑制に強い意思を示していることを受け、今回の据え置きは今後の追加利上げを想定した「スキップ」(タカ派的な一時休止)とみている。このため、次回8月会合を含め、年内にあと2回の追加利上げを予想、オフィシャルキャッシュレートのピーク金利を4.6%(一部では4.8%)と見ている。

 次回会合は8月1日に開かれる予定。

提供:ウエルスアドバイザー社

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