<新興国eye>カンボジア北西部のシェムリアップ新空港、10月16日に開港―アクセスに課題

新興国

2023/11/2 8:47

 10月16日、カンボジア北西部のシェムリアップの新空港「シェムリアップ・アンコール国際空港」が開港しました。前日に旧空港は業務を停止しました。ボンセイ・ビソット副首相兼閣僚評議会大臣が開港式典に参加しました。なお、正式な開港式典は、フン・マネット首相の参加を得て12月1日に開催される予定です。

 シェムリアップ新空港は、世界遺産アンコールワット観光の起点であるシェムリアップ市街の東約60キロメートルに位置しています。敷地面積約750ヘクタール、滑走路延長3600メートル、ターミナル面積8万平方メートル、旅客処理能力年間700万人、貨物取扱能力年間1万トンの計画です。契約期間55年間のBOT方式で建設されました。中国の雲南省投資控股集団(雲投集団)傘下のアンコール・インターナショナル・エアポート・インベストメントが請け負いました。総工費は当初予定の約8億8000万ドル(約1310億円)から、11億ドル(1640億円)に膨らんだ模様です。新型コロナの影響もあり、工事は遅れていましたが、なんとか開港にこぎつけた形です。

 旧空港は、シェムリアップ市街からすぐ近いというメリットがありましたが、周囲にアンコール遺跡等があり、運用に様々な規制がありました。そうした中で、かなり遠くとなりますが、大型機も発着可能な空港がコロナ明けと共に完成したことは、新型コロナで深刻な打撃を受けてきたカンボジアの観光業界には朗報と言えます。

 他方、市外から遠く離れているため、アクセスが課題となっています。唯一の公共交通手段となるシャトルバスは、一日4往復しかなく、不便な上に混雑がひどい模様です。なお、料金は片道8ドル、往復で15ドルです。また、定額タクシーも片道35ドル(約5200円)とカンボジアとしてはかなり高額です。また、アクセス道路の整備が完全ではないこともあり、交通渋滞も発生していて、片道2時間近くかかった例もあるようです。空港内店舗やレストランも、開港に間に合わなかったところが多いようです。

 今後、きちんとした工事の完成、ハード・ソフトインフラの整備、稼働後の維持管理等が重要な課題と見られますので、カンボジア政府の厳格な監視と指導が期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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