<新興国eye>チェコ中銀、賛成多数で金利据え置き―2委員が0.25ポイント利下げを主張

新興国

2023/11/6 9:22

 チェコ国立銀行(中銀)は前週(2日)の金融政策決定会合で、インフレを引き続き抑制するため、政策金利の2週間物レポ金利を7.00%に据え置くことを5対2の賛成多数で決めた。反対の2委員は0.25ポイントの利下げを主張した。

 中銀はインフレ加速を受け、21年6月会合で1年4カ月ぶりに利上げを再開。22年6月まで利上げを決めた。利上げ幅が計6.75ポイントに達したことから同8月に据え置きに転じ、利上げサイクルは9会合連続で止まった。金利据え置きはこれで11会合連続。7.00%の政策金利は20年超ぶりの高水準となっている。

 金利据え置きを決めたことについて、中銀は、「高インフレは後退しているが、依然、インフレ期待の上昇リスクが残っている。リスクは現在進行中の賃金交渉の結果や、来年初めに財・サービス価格が予想よりも高くなる可能性がある。さらに、24年のコアインフレ率は前年比3.0%上昇で高止まりする」と、インフレの見通しに警戒感を示した上で、「当面、かなり引き締めた金融政策を維持することを決めた」としている。

 今後の金融政策について、前回会合時と同様、「インフレ率は9月に前年比6.9%上昇と、22年秋の同18.0%上昇から急低下したが、依然として容認できない水準にある。中銀はインフレが十分に抑制されるまで、つまり2.0%上昇の物価目標近くで安定するまで、インフレとの戦いを続ける」とした上で、「今後の新しい経済データと経済予測の達成度合いに基づいて、金融政策を決定する」とし、現在、20年超ぶりの高水準となっている金利を据え置く可能性を示唆している。

 将来の利下げ転換の見通しについては、中銀は声明文で、「最新の経済予測について議論した」とした上で、「標準予測では23年10-12月期から金利が徐々に低下する」と指摘、利下げ開始の時期を明らかにした。

 市場では中銀は利下げ時期を遅らせ、金融引き締めを長期化させたいと見ている。中銀が利下げを遅らせたい背景には利下げによる通貨コルナ安の進行がインフレ抑制効果を低下させることへの懸念がある。一部の中銀幹部も最近の急速なコルナ安の進行と原油価格の上昇を理由に挙げ、金融緩和(利下げ)には慎重なアプローチが必要との考えを示している。

 ただ、市場では中銀がディスインフレ(物価上昇率の低下)に確信が持てれば、次回12月会合で0.25ポイントの緩やかなペースで利下げを開始する可能性があると見ている。アレス・ミシェル総裁は会合後の会見で、「金融緩和について議論を続けており、次回会合で利下げ、または据え置きが選択肢になる」と述べている。

 その上で、総裁は、「12月までに得られる新たなデータを評価し、理事会の過半数がインフレリスクは薄れたと判断すれば、利下げは可能だ」と述べている。ただ、総裁は、「現時点では我々はタカ派でありたいし、可能な限り長く、制限的でありたいと考えている」としている。制限的な金融政策スタンスとは、政策金利を中立金利以上に引き上げた場合、経済成長を抑える「制限的な領域」に入ることを意味する。

 また、中銀が今回の会合で発表した最新の11月経済予測によると、24年の平均インフレ率は2.6%上昇、25年にはさらに2.1%上昇に低下すると予想。他方、コアインフレ率は24年には3.0%上昇に伸びが加速するとして警戒している。景気見通しについては23年のGDP伸び率は0.4%減と、縮小。24年は約1.2%増と、プラス成長に戻ると見ている。

 次回の会合は12月21日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 上場EM債<1566.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ