米10月新築住宅販売、予想下回る前月比5.6%減の67.9万戸

経済

2023/11/28 9:38

<チェックポイント>

●住宅販売は予想を大幅に下回り、2カ月ぶり低水準に

●住宅価格は前月比3.1%低下、前年比は17.6%低下

●過去3カ月の販売件数は計6万2000件の下方改定

 米商務省が27日発表した10月の新築住宅販売件数(季節調整済み)は前月比5.6%減の年率換算67万9000件と、前月(9月)の同8.6%増(改定前は12.3%増)から急減速、8月(66万2000件)以来、2カ月ぶりの低水準となった。また、市場予想(72万ー72万2000件)も大幅に下回った。

 前年比は17.7%増と、7カ月連続で前年水準を上回ったが、20年8月のピーク時の102万9000件を依然、大幅に下回っている。

 市場では10月の販売減少は、住宅価格が低下、住宅供給(在庫)も改善したものの、住宅購入の借り入れコスト(住宅ローン金利)が高水準なため、住宅購入者のアフォーダビリティ(住宅取得能力)が抑制されていることが大きな要因と見ている。前月は住宅建築業者が需要喚起のため、住宅ローン金利の一部を肩代わりするバイ・ダウン(金利ディスカウント)を提供したため、販売が増加した。しかし、市場ではバイダウンには限度があるため、こうしたのインセンティブ(奨励策)効果は長続きしないと懸念している。

 住宅ローン金利はフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)の30年固定金利の平均約定金利でみると、直近の11月22日時点では7.29%と、低下傾向にあるものの、1年前の6.58%を上回っており、依然高水準。ただ、市場では最近の住宅ローン金利は米利上げサイクルの終了観測が強まっているため、低下傾向にあり、このまま、金利低下が進めば、需要が回復する可能性があると見ている。

 他方、10月の住宅価格は中央値(季節調整前)で、前月比3.1%低下の40万9300ドルと、9月の同4.0%低下に続き、2カ月連続で低下。1年前の過去最高値(49万6800ドル)を17.6%も下回った。ただ、コロナ禍前の19年6月の水準(31万1800ドル)を31.0%も上回っており、高水準に変わりはない。

 販売価格帯を見ると、40万ドル以上の高額物件の販売比率が52%と、9月の56%から低下した一方で、40万ドル未満の手ごろ物件比率は48%と、前月の45%や1年前の33%を上回った。

 新築住宅統計はサンプル数が少ないため、月によって変動が大きく、また、数値の大幅改定を受けやすいこともあり、今回の販売件数も割り引いて見る必要がある。過去3カ月(7-9月)の販売件数は計6万2000件の下方改定となった。

 住宅供給(在庫)をみると、10月の新築住宅在庫(着工前や建築中の住宅も含む。季節調整値)は前月比1.4%増の43万9000件と、5カ月連続で増加、22年12月(45万1000件)以来の高水準となったが、1年前(22年10月)のピーク時の水準(47万2000件)を5.8%下回っている。ただ、10月の販売ペースで計算した新築住宅の在庫水準は7.8カ月相当と、前月の7.2カ月を上回り、3月(8.1カ月相当)以来の高水準で、住宅建築業界が需要と供給のバランスが取れた容認可能な水準とする6カ月相当を上回った。

 住宅在庫のうち、すぐに販売できる完成件数は前月比横ばいの7万6000件と、在庫全体の17.3%と、依然、少なく、供給不足感が強い。未着工件数は全体の24.1%(10万6000件)、建築中件数は全体の58.5%(25万7000件)だった。

 在庫全体では住宅バブル期の在庫水準(45万件)に近いが、フレディマックの調査によると、現在の住宅取得需要は依然強く、需要を満たすためには住宅供給は最大400万件不足していると試算されている。市場の一部では最大で500万件が不足しているとの見方もある。

提供:ウエルスアドバイザー社

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