ビジコーチ、コーチング市場本格拡大で飛躍へ―「ジョブ型雇用」浸透追い風に

株式

2024/1/16 11:25

 ビジネスコーチ<9562.T>は企業の経営者などへの「ビジネスコーチング」を展開。欧米型の人事マネジメントが日本にも浸透しつつあり、事業環境は明るい。今24年9月期は豊富な受注残を背景に大幅増益への転換を見込む。買収した子会社の収益貢献も始まる。

<取引社数は約330社>

 主力のビジネスコーチングについて、同社は経営者、役員やその候補から、部長級以下のリーダー向けまで幅広いサービスを提供している。マンツーマンの「1対1型」とグループ向けの「1対n型」を軸に、顧客のニーズを踏まえたカスタマイズを得意としている。

 日本企業は従来、終身雇用や年功序列が特徴の「メンバーシップ型雇用」が主流だった。一方、欧米では、総合的なスキルを重視するメンバーシップ型とは異なり、特定の職務やポジションに適した能力・資質を持つ人をピンポイントで採用する、「ジョブ型雇用」が当たり前だ。

 近年では、日本でも欧米式のジョブ型雇用を採用する企業が増えていることに伴い、キャリア開発や人材育成に求められる手法も変わり始めた。経営層には、そうした変容に応じたリーダーシップや、的確なコミュニケーション術を身に付ける必要が生じている。ビジネスコーチングによるトレーニングは、それを支える。

 同社は本場米国のノウハウを取り入れ、まだ日本で市場が本格的に立ち上がる前の2005年に創業したビジネスコーチング企業。自前のスクールでコーチを養成し、役員向け(エグゼクティブコーチング)にもリーマン・ショック直後の09年に参入した。

 ジョブ型雇用の拡大や、後継者を育成する「サクセッションプランニング」への注目度が高まる中で、売上高は前9月期(単体、11.6億円)まで5年間で年平均15%の成長を遂げた。22年10月に新規上場し、取引企業数は前期末時点で約330社、パートナーコーチは166人を擁する。

<利益再拡大なら株価見直しも>

 前期は人件費の増加や、計画外の外注費の発生もあり、経常利益が前々期比69%減の0.8億円にとどまった。また、企業の間で、コロナ禍明け後に新卒社員の研修を急ぐ動きが強まった半面、エグゼクティブなどへのコーチングは案件の進ちょくが遅れる傾向があったようだ。

 しかし、一方で同社のサービスへの引き合いは好調さを維持している。前期の受注高は13.8億円(前々期比19%増)となり、期末受注残は6.9億円(前々期末比49%増)に上積みされた。連結決算に移行する今期は、売上高18.9億円、経常利益2.7億円(単体では売上高14.5億円、経常利益2.0億円)を計画。高水準の受注残を踏まえると、収益上ブレも期待される。

 また、前年10月に買収した子会社の購買Design社の事業展開も注目材料だ。同社は資材購入の見える化を通じたコスト削減コンサルを主力とし、DX(デジタルトランスフォーメーション)を得意とするITサービス事業ではインフラ関連の大口顧客を持つもよう。連結初年度から、のれん償却費を吸収して利益貢献するとみられる。

 ビジコーチの株価は前期の減益や新興市場の低迷を背景に、22年10月の上場直後に形成した4245円の高値に対し、1000円台前半まで切り下げている。ただ、今期の業績好転への信頼度が市場で高まれば、見直し機運を誘う公算。第1四半期(昨年10-12月)決算は2月10日に発表する。有配株(今期配当予想は期末一括50円)であることや、新興株を苦しめてきた米国の金融引き締めが一巡しそうな点も見逃せない。

提供:ウエルスアドバイザー社

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