<新興国eye>インドネシア中銀、金利据え置きー3会合連続―市場は上期まで据え置きを予想

新興国

2024/1/18 8:56

 インドネシア中央銀行(BI)は17日の理事会で、インフレ低下と通貨ルピア相場の安定を受け、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を高水準6.00%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.25%、翌日物貸出ファシリティー金利も6.75%と、いずれも据え置いた。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で3年9カ月ぶりに利上げに転換、23年1月会合まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、これまでの累積的な利上げ効果を見るため、同2月会合で22年7月以来7カ月ぶり金利据え置きに転じ、同9月会合まで8会合連続で据え置いた。同10月会合では9カ月ぶりに利上げに踏み切ったが、同11月会合で再び据え置いた。据え置きは3会合連続。

 中銀は会合後に発表した声明文で、金利据え置きを決めたことについて、前回会合時と同様、「ルピア相場を安定させる政策を強化するため、また、インフレ率を24年の物価目標である前年比1.5-3.5%上昇(中央値2.5%上昇)の範囲内に抑制するための先制的かつ将来を見据えた措置だ」としている。

 ただ、市場では2月に大統領選挙を控えているため、中銀はルピア相場とインフレを警戒し、金利を据え置くと予想していた。

 インフレについて、中銀は、「23年12月のインフレ率が前年比2.61%上昇と、11月の同2.86%上昇を下回り、物価目標のレンジ内に収束した」、また、「23年のコアインフレ率も輸入物価の低下やインフレ期待の抑制などにより、前年比1.8%上昇の低水準に維持されると予想している」とし、その上で、「金融政策は主に金利政策と通貨ルピア為替相場の安定を通じて行われており、今後も(ルピア相場の)安定化に向けた金融政策を強化、政府の政策との相乗効果を強め、24年のインフレ率を1.5-3.5%上昇の物価目標の範囲内に確実に抑制する」としている。

 ルピア相場については、中銀は、「23年12月時点に比べ、対ドルで1.24%低下しただけで、1月6日までのルピア相場は比較的安定している」とし、その上で、「今後、ルピア相場は世界的な不確実性の緩和や先進国の債券利回りの低下傾向、ドル高圧力の緩和に支えられ、上昇傾向で安定する」とし、ルピア相場の下落懸念が緩和したと見ている。

 また、景気見通しについては、中銀は今回の会合でも23年の成長率目標を4.5-5.3%増に据え置いた。その上で、「24年も経済は内需、特に消費の伸びと総選挙の好影響、国家戦略プロジェクト(PSN)の継続によって拡大する」とした上で、24年の成長率見通しも4.7-5.5%増に据え置いた。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「持続可能な経済成長を支援するため、金融(市場流動性)やマクロ・プルーデンスな政策(金融システムの安定を目指した政策)、決済システムのポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とし、これまで通り、ルピア相場の安定のため、スポット市場での介入や、ルピアを決済に使う為替フォワード(先渡し)取引である「DNDF(ドメスティック・ノン・デリバラブル・フォワード)市場での介入を継続するとしている。

 中銀は景気支援策として、23年7月会合で一般の商業銀行やシャリア銀行(イスラム法に則って銀行業務が行われるイスラム系銀行)などを対象とした流動性強化政策(KLM)を決め、同10月1日から銀行が中銀に積み立てる預金準備率を引き下げたが、今回の会合でもこのKLMの有効性を確認。前回会合時、中銀は、「KLMにより23年12月時点で163兆3000億ルピアの流動性を創出した」とし、その上で、「持続可能な経済成長を支援するため、今後もこの有効性を高める」としている。流動性の増加は銀行融資の拡大につながるため、市場では中銀は利下げに代わって信用の増加を選択したと見ている。

 市場では中銀は24年上期まで金利据え置きのスタンスを維持すると見ているが、FRB(米連邦準備制度理事会)が早期に利下げに転換すれば、インドネシア中銀も追随すると予想している。ペリー・ワルジヨ総裁は23年12月、ルピア相場の安定とインフレの低下を確実にするため、24年下期まで金融政策の緩和(利下げ)が行われる可能性は低いと指摘している。

 次回の会合は2月20-21日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ