<新興国eye>タイ中銀、予想通り金利据え置き―今後も据え置きを示唆

新興国

2024/2/8 8:46

 タイ中央銀行は7日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を2.50%に据え置くことを5対2の賛成多数で決めた。ただ、全員一致ではなく、初めて2委員が0.25ポイントの利下げを主張、反対票を投じた。

 中銀は通貨バーツ安とインフレ上ブレリスクが強まったとして、22年8月会合で18年12月以来、3年8カ月ぶりに利上げ(0.25ポイント)に転換。23年9月会合まで8会合連続で利上げを実施、利上げ幅は計2.00ポイントに達し、2.50%の金利は13年以来11年ぶりの高水準となっている。前回23年11月会合で17カ月ぶりに据え置きに転換、今回の会合で2会合連続の据え置きとなった。

 スレッタ・タビシン首相は景気刺激の利下げ転換を急ぐよう中銀に圧力をかけているが、今回の会合でも中銀は政治圧力に屈せず、据え置きを決めた。ただ、市場では2委員が利下げ支持に回ったことから中銀のタカ派スタンスが緩和、利下げ方向に動き出す可能性が出てきたと見ている。

 2委員の利下げ支持について、中銀は声明文で、「潜在成長率の低下に対する懸念」としている。中銀は景気見通しについて、「タイ経済は23年後半から減速しており、24年の成長率は2.5-3.0%増が予測されているが、鈍化する見通し」としている。中銀は、「世界的な需要の鈍化と中国の成長鈍化を背景に輸出と製造活動が低迷、2024年は成長が減速する。財輸出と観光業が予想以上に抑制されている」と懸念を示している。

 しかし、中銀は、「経済成長の見通しを妨げる主な要因は外的要因と構造的要因と判断する」とし、利下げにより、景気リスクが解決されないと主張。これに対し、政府は景気循環的な景気減速と見て利下げを要求、政府と中銀の確執が続いている。23年の成長率は1.8%増に鈍化すると予想されている。

 インフレ見通しについては、中銀は、「インフレ率は24年に1.0%上昇に近い水準で安定するが、その後、25年から徐々に加速する見通し」と懸念をしめしている。また、中銀は、「インフレ見通しに対する主なリスクはエネルギー価格に影響を与える中東情勢と農産物価格に対する気候変動、政府の補助金などが含まれる」とし、その上で、「内需の勢いは引き続き維持されているため、インフレ率は物価目標の範囲に向かって徐々に上昇する」としている。

 今後の金融政策について、中銀は、「現在の政策金利(水準)は長期的に金融の安定を促し、経済成長を維持することに寄与する」とした上で、「景気の見通しに対する不確実性が高まっていることに留意、今後の金融政策を検討するにあたり、景気とインフレの見通しに考慮する」とし、金利据え置きの継続の可能性を示唆している。

 ただ、市場では経済成長が依然、低迷しているものの、中銀は景気刺激などによるインフレ再加速に警戒感を緩めておらず、利下げ開始は早くて4-6月期になると見ている。

 次回会合は4月10日に開催される予定。

<関連銘柄>

 タイSET<1559.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、

 上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

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