<新興国eye>カンボジア経済、新型肺炎でマイナス成長―IMF世界経済見通し

新興国

2020/4/24 11:22

 4月14日、IMF(国際通貨基金)は、世界経済見通し(WEO)2020年4月版を発表しました。

 世界経済については、「世界経済が今年、10年前の世界金融危機の時を超える、大恐慌以来最悪の景気後退を経験する可能性はきわめて高い。現在の危機は大恐慌ならぬ“大封鎖”の様相を呈しており、世界経済はこの危機の結果、劇的なマイナス成長に陥ることが予測される」としています。世界経済は20年にマイナス3%と大幅な縮小が予想され、これは08年から09年にかけての世界金融危機の時よりもはるかに深刻だとしています。

 このように世界経済が大きな困難に直面している中で、カンボジア経済も深刻な状況になるものと見られます。成長率予測は、20年にマイナス1.6%まで低下すると見ています。前回の予測では6.8%の成長を達成できるとしていました。しかし、21年にはリバウンドするとして、成長率を6.1%と見ています。

 物価上昇率は、20年1.5%(前回2.6%)、21年1.9%(前回2.8%)に鈍化することを見込んでいます。

 経常収支の赤字(対GDP比)は、19年の12.5%から20年には22.2%に大幅に悪化するとしているものの、21年には17.6%まで戻すと予測しています。これは、主要な輸出先国である欧米の経済悪化で、20年のカンボジアからの輸出が期待できないためと見られます。

 なお、IMFでは、「この予測、パンデミック(感染症の世界流行)そのもの、そのマクロ経済への影響、さらには金融市場および一次産品市場のストレスなど、依然として相当な不確実性が存在する」としており、今後の動向によっては、実際の数値は大きく変動する可能性があるとしています。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。1982年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。07年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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