ECB、政策金利据え置き―緊急債券買い入れ規模1兆3500億ユーロを維持

経済

2020/7/17 10:10

<チェックポイント>

●政策金利は現行か下回る水準を物価目標の達成まで継続

●緊急債券買い入れ制度「PEPP」の期限を21年6月末まで延長も据え置き

●域内景気は4月に底打ち、5月と6月に部分的にかなり回復―ラガルドECB総裁

 ECB(欧州中央銀行)は16日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.00%に、下限の中銀預金金利をマイナス0.50%に、上限の限界貸出金利を0.25%に、いずれも据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 ECBは会合後に発表した声明文で、金融政策運営について、前回6月会合時と同様に、「今後は経済予測の期間中、インフレ見通しが2%上昇をやや下回る水準(物価目標)に十分に収束するまで、ECBの政策金利は現在の水準か、または一段と低い水準となることが予想される」とし、将来の利下げに含みを残した。

 量的金融緩和(QE)についても、3月18日の緊急理事会で、コロナ危機対策として導入を決めた緊急債券買い入れプログラム「PEPP」の規模を現在の1兆3500億ユーロに据え置くことも決めた。ECBは6月会合で、PEPP規模を従来の7500億ユーロから市場予想(5000億ユーロ)を上回る6000億ユーロの増額を決めている。

 PEPPは既存の資産買い入れプログラム「APP」とは別に導入されたもので、債券買い入れを増額することにより、ユーロ圏域内の長期金利の低下を促し、企業や家計の借り入れコストを引き下げ、景気を支援するほか、ディスインフレ(物価上昇率の鈍化)を防ぐことを狙いとしている。ラガルドECB総裁は会合後の記者会見で、「PEPPは効果的かつ適切に機能しており、PEPPの変更について議論していない。再検討する必要はない」と述べた。

 また、今回の会合でもPEPPの期限を21年6月末までとし、買い入れ資産の対象はAPPの対象資産のほか、信用格付けが低いことからこれまで買い入れ要件を満たしていなかったギリシャ国債も買い入れの対象に含まれる。さらに、買い入れ期限が到来する21年7月以降についても新規の買い入れは行わない代わりに、22年12月末まで買い入れた国債の満期償還金を再投資する、いわゆるロールオフ(過剰流動性を吸収するための不胎化政策)を行う方針も据え置いた。

 今回の会合で、政策金利やPEPPの規模を据え置いた背景には、新型コロナ危機によるユーロ圏のリセッション(景気後退)懸念が残るものの、20年のユーロ圏のGDP(国内総生産)が予想されているマイナス8.7%ほど、悪化しない可能性が出てきたことがある。また、EU(欧州連合)加盟27カ国による首脳会議(サミット)が17-18日に開かれ、新型コロナ危機に対応する総額7500億ユーロの「EU復興基金」が決まる見通しがあるからだ。復興基金が決まれば、加盟国は共同で国債を発行し、資金調達することになるが、もし、景気が一段と悪化した場合、ECBが国債買い入れを増額する可能性がある。市場では今後2-3年間でさらに1兆ユーロの買い入れ増額を予想している。

 ラガルド総裁は会合後の記者会見で、ユーロ圏経済の現状認識について、「パンデミック(感染症の世界的流行)前の水準をかなり下回っているものの、ユーロ圏経済は6月初めの前回会合以降、経済活動の再開の兆しを示す経済指標が見られている。景気指標は4月に底打ちし、5月と6月にまだら模様ながらかなりの回復を見せた」とし、慎重な姿勢を保ちつつも、前向きな見方を示している。また、同総裁は、PEPP買い入れを前倒して、6月末までに3600億ユーロの買い入れを実行。その結果、ユーロ圏の投資適格社債のスプレッドがPEPP発表時に比べ、大幅に低下(改善)したとしている。

 また、ECBは今回の会合でもAPPの継続および満期償還金の再投資を継続する方針も据え置いている。

 次回の金融政策決定会合は9月10日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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