7月FOMC議事録、「イールドカーブ・コントロールは将来の選択肢」と早期導入否定
2020/8/20 11:16
<チェックポイント>
●「新型コロナ危機は中期的に景気見通しに対し、重大なリスク」
●「大規模金融緩和は当分の間、必要となる可能性高い」
●「政策金利の道筋をより明確にすることは将来のある時点で適切」
FRB(米連邦準備制度理事会)は19日、FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録(7月29-30日開催分)を公表した。市場が期待していたイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)政策の早期導入の可能性については、「将来的な選択肢として残されるべき」とした上で、「現時点では正当化されない」と見ていることが明らかになった。これを受け、市場のハト派期待が後退し、株安・ドル高が進み、米10年国債利回りが上昇した。
この点について、「政策金利に関するフォワードガイダンス(金融政策の指針)の信頼性が高く、長期金利もすでに低下している現状では、イールドカーブの上限や目標を設定するメリットはごくわずかだ」との見解が示された上で、「多くの参加者はイールドカーブの上限や目標を設定することでバランスシートが急速かつ過度に膨れ上がるデメリットがあると指摘し、現状では導入は正当化されないが、状況が悪化すれば将来の一つの選択肢とすべきだ」としている。
イールドカーブ・コントロール政策は、新型コロナの感染再拡大で景気が一段と悪化した場合、FRBの次の一手として、ゼロ金利を長期にわたって維持するため、量的金融緩和による資産買い入れの目標として、10年国債の利回り目標を設定するというもの。
市場では秋になっても景気が回復しない場合、イールドカーブ・コントロール政策を導入するとの見方が強かった。今回公表された議事録を見る限り、市場ではイールドカーブ・コントロールは経済情勢が大幅に悪化しない限り、年内に導入されないと見ている。
新型コロナのパンデミック(感染症の世界的流行)による景気の先行きについて強い懸念が示された。議事録では、「政策委員は新型コロナ危機が短期的には経済活動や雇用、インフレに深刻な影響を与え、中期的には経済の先行き見通しに対し、重大なリスクとなる」との判断を示している。その上で、「数人の委員から景気回復と物価目標の達成のために追加の金融緩和が必要になると指摘された。一方、迅速な雇用市場の改善を推し進めるためには一段の財政支援が必要との認識も示された」とし、特に政府の財政出動への期待感が示された。
政府の失業保険給付の週600ドルの割り増し給付制度(7月31日終了)や3月に雇用維持を目的に導入された、政府の中小企業支援策「給与保護プログラム(PPP)」(8月8日に終了)など雇用維持政策はすでに終了している。このため、市場では政府の追加景気支援策が議会で依然、承認されていない現状を考慮した上で、8月以降の個人消費は伸びが鈍化するとみている。
一方、トランプ米大統領は8月8日、失業保険給付の割り増し給付について、新たに週400ドルの割り増し給付を実施するための大統領令に署名し、支援を継続する姿勢を示したが、これは各州政府が全体の25%相当の100ドルを拠出できるかどうかにかかっている。もし州政府が拠出できない場合、実際の割り増し額は300ドルと、従来の半分になる見通しだ。また、国の割り増し給付は州政府から最低でも週100ドルの保険給付金が受けられることが資格要件となっているため、すべての失業者が割り増し給付を受けられる保証はないのが実情だ。
また、FRBは超金融緩和政策を長期継続する可能性について議論した。今回の議事録では、「委員の多くが、大規模金融緩和はより長期にわたり総需要を支えると期待され、2%上昇のインフレ率の達成には、当分の間、必要になる可能性が高いと指摘した」としている。
フォワードガイダンスについては、市場では次回9月15-16日会合で、FRBはゼロ金利政策をインフレ率が物価目標か、それを上回るまでは継続することや期限を明示すると予想していた。ただ、今回の議事録では、「政策金利の道筋について、より明確性を示すことは将来のある時点で適切となる」としただけで、新しいガイダンスを示す具体的なスケジュールは示していない。
<関連銘柄>
NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、
SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、
NYダウベア<2041.T>
提供:モーニングスター社
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