<新興国eye>カンボジア政府、中小企業・スタートアップ企業をファンドで支援

新興国

2020/8/21 14:37

 カンボジア経済財政省が設立した起業家開発ファンドである「クメール・エンタープライズ(KE)」は、7月27日から「KE支援パッケージ」の第2ラウンドの申請を受け付けています。この支援パッケージは、中小企業やスタートアップ企業の様々な課題に対応することを目的としています。

 支援パッケージ第1ラウンドは、4月から申請を受け付けており、128社が支援パッケージに適格として選定されたところです。今後、具体的な支援が決定・公表され、支援が供与されることとなっています。

 クメール・エンタープライズでは、第1ラウンドの選定過程を通じて、申請してきた中小企業やスタートアップ企業は、様々な能力やイノベーションを持っているが、その一方で資金面での課題や能力不足等に関する支援を必要としていることがよくわかったとしています。

 カンボジア産業開発政策(IDP)では、外資の誘致に加えて、地場中小企業育成を大きな柱としています。また、労働集約型産業の次のステップとして、「イノベーション産業」に期待をかけています。

 カンボジアは、周辺に、中国・タイ・ベトナムといった強力な競争相手がいるため、これらの国と重複する産業(白物家電や自動車、鉄鋼や石油化学)は、期待薄となります。そのため、開発の王道のこれらの産業を飛ばして、IT等のイノベーション産業に進む必要があるとしています。

 この政策に沿っていつの間にか、世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を主軸としたフィンテックや、グラブ等の配車サービス、食事のデリバリーなど、カンボジアが日本を追い越していると見られるものも出てきています。

 こうした新しい産業の芽を、カンボジア政府が後押ししていくことは大変重要なことであり、中小企業・スタートアップ企業への支援政策が実施されていくことが期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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