「ひふみプラス」と新興国株式インデックスが浮上=ネット証券の投信積立契約件数ランキング20年10月
2020/11/10 17:03
大手証券3社の投信積立契約件数ランキング(月次、20年10月)で総合2位の「ひふみプラス」とトップをひた走る「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」とのポイント差が5ポイントまで迫ってきた。過去を振り返ると、今年4月には15ポイントの差があった。それが9月には9ポイントにまで縮まり、さらに一歩近づいたことになる。この背景には、「ひふみプラス」のパフォーマンスがS&P500を凌駕する優れたものであることがあるだろう。パフォーマンスの点では、ここ数カ月でトータルリターンが向上している新興国株式インデックスもランキング上位に入ってきたことが注目される。
ランキングは、定期的に月次の投信積立契約件数トップ10を公表しているSBI証券、楽天証券、マネックス証券の公開情報を使用。各社ランキング1位に10点、以下、順位が落ちるたびに1点を減点し、第10位を1点として、3社のランキング10位までのファンドの点数を集計した。
過去1年間(10月末基準)のトータルリターンについて、「ひふみプラス」と「eMAXIS Slim」シリーズの代表的なインデックスファンドを比較すると、「ひふみプラス」が15.22%に対して、「S&P500」が5.92%、「新興国株式インデックス」が4.84%、「オール・カントリー」が1.60%、「先進国株式インデックス」が1.51%の順位になる。同様に、過去6カ月間のトータルリターンは、「ひふみプラス」が20.72%、「新興国株式インデックス」が20.52%、「オール・カントリー」が11.53%、「S&P500」が10.99%、「先進国株式インデックス」が10.42%という順位になる。いずれの期間でも、「ひふみプラス」が第1位となり、過去6カ月でみると「新興国株式インデックス」が大きく上昇していることがわかる。
投信積立は、比較的長期の投資になることから、投資期間中に継続して課金される手数料である信託報酬が低いファンドが好まれる傾向にある。業界最低水準の信託報酬(年0.0938%)を実現した「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」がSBI証券で不動の積立契約第1位を継続しているのも、それに次ぐ低コスト(0.0968%)の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が積立契約件数の総合第1位を続けているのも、コストが低いという優位性があるためだ。パフォーマンスは予見ができないが、コストは公表されているので、より低いファンドを選ぶことが可能だ。コストはパフォーマンスを削り落とすので、少しでも信託報酬率の低いファンドを選ぶことが、より良いパフォーマンスを獲得することにつながる。
ところが、「ひふみプラス」とその他のインデックスに現れているような、明らかなパフォーマンスの差がある場合は、どうだろう? 年15%のトータルリターンと5.9%のリターンでは、違いが大きすぎる。もちろん、パフォーマンスは常に一定の水準ではない。「ひふみプラス」のようなアクティブファンドでは、得手不得手とする市場環境もあるだろうから、常にインデックスを上回るパフォーマンスが保証されているわけでもない。ただ、2008年10月に設定された「ひふみ投信」から10年以上にわたって、優れたパフォーマンスを残してきた運用成績には信頼感もある。モーニングスターが運用の効率性に基づいて評価しているモーニングスターレーティングでも最上位の5ツ★に格付けされている。
さらに、パフォーマンスの点では、この6カ月間に大きく上昇した「新興国株式インデックス」も注目される。過去6カ月のトータルリターンは、「ひふみプラス」とそん色ない20%超を記録している。今年3月のコロナショック後の立ち直り局面では、米国の大型ハイテク企業が先導し、S&P500やNASDAQ総合指数といった米国の株価指数の上昇が目立った。ところが、米国株価は昨年から史上最高値を更新するほどに歴史的な高値水準にあり、かつ、コロナショックの急落から余りにも短期間に株価が戻ったために、市場に高値警戒感が出ている。その間に、出遅れが指摘されていた新興国や日本の株価が浮上してきた格好だ。
新興国株式インデックスの浮上は、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」といった、先進国も新興国も併せて投資するファンドの人気にもつながっている。今後も、新興国株式インデックスの好調なパフォーマンスが維持されるものか注目していきたい。
提供:モーニングスター社
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