日本人投資家の希望の星は「国内小型株ファンド」、長期で米国株式を上回るリターン

投信

2020/11/25 17:08

 米国のNYダウが史上初めて3万ドルの大台を超えた。同時に、S&P500も史上最高値を更新などというニュースを耳にすると、未だ日経平均株価の最高値までは1万円以上も隔たりのある国内株式と比較して「アメリカ人がうらやましい!」と思ってしまう。もとより、401kプラン(企業型確定拠出年金)などの長期・積立投資の歴史が定着し、「401kミリオネア(100万ドル長者)」も珍しくないといわれるアメリカの資産形成を助けているのは、世界最大の米国株式市場があってこそだと考えられる。しかし、私たちが米国株式に投資しても、額面通りの投資収益が得られるとは限らない。為替変動の影響が無視できないほどに大きいからだ。その点で、実際に投資可能な投資信託のトータルリターンを調べてみると、10年、20年という中長期投資では、国内の小型株に投資するファンドが際立って良い運用成績をあげていることがわかる。

 2000年から2020年までの20年間の運用成績をモーニングスターインデックス(分割・分配金を考慮した各ファンドの日々リターンを求めて単純平均した指数)で振り返ると、「国内小型バリュー」のパフォーマンスが極めて優れていることがわかる。次に来るのが「国内小型グロース」だ。実際に、「TOPIX連動型」、「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」などと比較してみると、そのパフォーマンスの格差は明確だ。

 過去20年間での年率リターンは、「国内小型バリュー」が8.81%、「国内小型グロース」が8.18%に対し、「TOPIX連動型」は1.98%、「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」は3.20%になる。米国株式に投資するファンドを選ぶよりも、国内小型株ファンドを選んで投資していた方が、よほど大きな投資収益を得られていた。

 印象としては、過去の運用成績は米国株式の方が、よほど良い成績だったように感じられるが、実績は違う。この差が生じる理由のひとつは為替の影響だ。ドル円のレートは、2000年当時は1ドル=120円台だった。それが、現在は104円台だ。2000年当時と比べると15%程度のドル安・円高水準になっている。実際に、NYダウの指数としてのリターンは、過去20年では年率5.26%、S&P500は同5.20%となっている。ドル安・円高の影響で年率5%台だった米国株式の投資収益率が年率3%台に押し下げられてしまった。

 また、過去10年間でみると、「国内小型バリュー」の年率リターンは13.04%、「国内小型グロース」は同17.66%とともに2桁の好成績となり、「TOPIX連動型」の8.02%、「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」の9.28%を大幅に上回っている。米国の株価指数は、NYダウが年率10.01%、S&P500が同11.20%であり、為替の影響はそれほど大きくはなかった。日米ともに、過去10年間は株式投資に大きな収益チャンスがあった期間といえるが、そのような株高局面では、国内小型株のパフォーマンスもまた、際立った良い成績を残している。

 20年投資というような長期の投資期間は、「公的年金を補完する老後資金のため」などを目的とした投資になる。年金生活の手元資金として必要なのは「日本円」である。米国株式がいくら調子よく値上がりしていても、その間にドル安・円高が進んでしまえば、日本円での運用収益は米国株高の効果ほどには得られない。その点、国内の株式で運用する分には、株価の値上がり率がストレートに運用成績になる。

 日本の経済は、国内人口が減少する経済となっていることから、日本の国全体の成長を測るGDP成長率などは、米国や中国などと比較すると低い水準となり、投資対象としての魅力は薄いと感じられる。その魅力的でない日本経済を象徴しているのが、TOPIXの過去の値動きといえる。国内の大型株に投資していると、優れた企業を選別して投資してもTOPIXを大きく上回る成績をあげることは難しい。ところが、小型株には、日本経済全体の動きとは関係なく個別に大きく成長できる企業が存在する。実際に、過去3年間のEPS(1株当たり利益)成長率が20%台や50%以上などという企業がいくつも存在する。

 「国内小型株」に分類されるファンドは、高い成長が期待できる企業を見つけ出し、選別投資するアクティブファンドが基本だ。運用会社・運用チームの力量によってパフォーマンスに差が出る部分もある。投資にあたっては、過去の運用成績を良く調べて、カテゴリー平均を上回る成績を安定的に残しているファンドを選んで投資することが肝要だ。

提供:モーニングスター社

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