<新興国eye>カンボジア公的債務統計報告書―債務状況は問題ないレベル

新興国

2021/4/30 11:07

 3月31日、カンボジア経済財政省は、公的債務統計報告書第11号を公表しました。20年末現在のカンボジア政府の債務状況について詳細な統計により報告しています。

 1993年から2020年末までの累積で見ると、借款契約の総額は、150億3914万ドル(約1兆6393億円)となっています。そのうち、83.6%がインフラ整備に向けたものです。国別では、中国が最大で52億5526万ドル(全体の34.9%)、以下、アジア開発銀行34億7583万ドル(23.1%)、日本20億48万ドル(13.3%)、世界銀行16億5852万ドル(11.0%)、韓国10億4175万ドル(6.9%)等となっています。20年末の公的対外債務残高は、88億1042万ドル(約9603億円)となっています。

 債務持続性分析を見てみると、公的対外債務の現在価値の対GDP(国内総生産)比率は24.0%(基準値40%)、同対輸出比率32.8%(同180%)、債務返済比率(債務返済の対輸出比率)1.8%(同15%)、債務返済の対歳入比率6.3%(同18%)と、いずれも健全とされる基準値を大きく下回っており、全く問題ありません。ストレステストでも基準値を超えることは全くなく、対外債務については、カンボジアは大変な優等生ということができます。世界銀行・IMF(国際通貨基金)の判定でも「低リスク国(青信号国)」に分類されています。

 多くの途上国が、新型コロナ対策で多額の財政支出を余儀なくされ、また、経済状況も悪化する中で、対外債務に苦しみ始めています。カンボジアは、債務の過半が日本や世界銀行・アジア開発銀行からの譲許的借款であることに加え、債務マネジメントをしっかり行ってきたため、対外債務については概ね問題ない状況にあります。いわゆる「債務の罠」に陥らないためにも、特定国に偏り過ぎないようにバランスを取りつつ、引き続き債務をきちんと管理していくことが必要と見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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