海外株式見通し=米国、香港

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2021/5/27 8:28

米国株:「テスラリスク」を警戒、半導体も非主流の高配当銘柄優位に

 暗号資産(仮想通貨)のビットコイン(BTC)価格の乱高下が株式市場を揺さぶっている。特に、2月にBTCを購入したEV(電気自動車)大手の米テスラ<TSLA>の株価は、4月半ば以降イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)のツイートに伴ってBTC価格との連動性を高めている点は要注意だろう。

 本業に関しても、中国市場での4月のテスラのEV販売台数は前月比27%減(製造登録台数は同66%減)と急減した。4~6月期決算への懸念が高まりやすく、「テスラリスク」は米ハイテク成長株全体にとっても主要なリスクの1つになりつつある。

 その一方、EVでテスラを追いかける自動車メーカーのフォード・モーター<F>とゼネラル・モーターズ<GM>の株価は景気循環バリュー(割安)株とみられていることもあり、相対的に堅調に推移している。成長株の一端を担う半導体セクターをめぐっても、2ナノメートル(ナノは10億分の1)の微細な半導体製造プロセス技術を発表したIBM<IBM>のような高配当利回りバリュー銘柄で、関連銘柄としては非主流に位置付けられるものが当面は優位に立つ可能性がある。

 また、これまで堅調に高騰を続けてきたコモディティー(商品)市況にも変調の兆しがみられる。この要因として、中国人民銀行が中国で事業を行う銀行に対し新規融資額を前年同期以下の水準に抑えるよう指示したことで、与信関連の金額の伸びが軒並み鈍化したことが挙げられる。コモディティー相場の中期的な基調に変化はないとしても、短期的にはコモディティー・メリット銘柄の株価が重くなりやすい時期かもしれない。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

香港株:中国経済に弾みを付ける「新型消費」

 中国国務院が昨年9月、「新業態・新モデルによる新型消費発展加速化のけん引に関する意見」を発表。同意見には、今後3~5年で複数の新型消費のモデル都市と先導企業を育成し、小売売上高に占めるオンライン比率を大幅に高め、オンラインとオフラインの融合といった消費の新業態・新モデルによる「新型消費」を普及させる政策目標が盛り込まれた。

 そうした中、このほど中国商務部主催の「2021年全国消費促進月間」が上海で開幕。新型消費のコンセプトとなるデジタル人民元、ライブコマース、老舗企業のデジタルツール導入などがイベントの主役になるという。メーデーの5連休期間中(4月30日~5月4日)の上海の小売売上高は前年同期比30%増となり、コロナ前の19年同期比でも9.6%増と快調な滑り出しを見せた。

 ちなみに、前年9月に北京で開かれた「20年全国消費促進月間」の消費イベント(20年9月9日~10月8日)は、売上高がその前の1カ月間(8月9日~9月8日)と比べて7%増となり、このうちモノの売上高は11.4%増だった。また、新型消費に代表されるライブコマースの売上高は16.1%増えた。今年の全国消費促進月間でも新型消費による波及効果が注目される。

 アリババ<BABA>の21年1~3月期決算は、独占禁止法違反に伴う巨額の罰金が科されたことから76.6億元の営業赤字を計上したものの、売上高は前年同期比63.9%増に拡大し、一時的要因の影響を除く調整後純利益も同17.6%増と堅調だった。競合他社のテンセントのメッセージアプリ上でサービスを展開する方針とすることで独禁法を順守する意思を示し、規制当局による独禁法調査期間が短期間にとどまると見込まれる。「新型消費」を推し進めるには、けん引役となるEC(=Eコマース、電子商取引)サイト大手の活躍が欠かせないだろう。

(フィリップ証券リサーチ部・李一承)

(写真:123RF)

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