RBA、政策金利と量的金融緩和政策を維持―24年まで利上げの条件が整わない公算大<チェックポイント>

経済

2021/6/1 17:05

●3年国債利回り目標を0.10%に据え置き

●「豪ドルレートは過去数年間の相場変動レンジの上限にある」と懸念示す

●コロナ感染急拡大の可能性が経済見通しの先行き不透明の最大要因

 豪準備銀行(RBA、中銀)は6月1日の理事会で、引き続き景気を支援するため、政策金利であるオフィシャルキャッシュレート(OCR、銀行間取引で使われる翌日物貸出金利)の誘導目標を過去最低水準の0.10%に据え置いた。市場予想通りだった。

 RBAは20年11月会合で、新型コロナのパンデミック(感染症の世界的大流行)の悪影響が現れ始めた20年3月以来、8カ月ぶりに利下げを決めたが、20年12月会合で据え置きに転換。これで据え置きは6会合連続となる。

 RBAは声明文で、「豪州経済の回復は順調に進み、予想以上に強い」としたが、「相変わらずインフレや賃金の上昇圧力は弱い。短期的には4-6月期にインフレ率がパンデミック中の物価下落の反動などにより3%上昇を超えるが、一過性だ」とし、引き続き景気を過熱させる必要性を指摘した。これはRBAが、「コロナ感染急拡大の可能性が経済見通しの先行き不透明の最大要因」として警戒を緩めていないことを意味する。

 また、RBAは2月会合で、計1000億豪ドル買い入れるQE(量的金融緩和)プログラムの規模を期限切れの4月中旬以降も継続し、さらに1000億豪ドル増額することを決めたが、今回の会合でもこれらの方針を据え置いた。

 市場では、RBAは正当化されない豪ドル高の進行を回避するため、金融緩和政策を長期化させるとみている。豪ドル相場について、RBAは今回の会合でも、「豪ドルレートは依然、ここ数年間の相場変動のレンジの上限となっている」と懸念を示している。

 金融状況については、前回会合時と同様、「住宅市場はすべての大都市圏で住宅価格が上昇し、一段と強い状況となっている」とした上で、「(住宅価格の上昇や低金利により)家計部門の信用(与信)の伸びは上昇している」、「住宅価格の上昇と低金利の状況を考慮し、家計部門の借り入れ(債務)動向を注視する。家計への融資条件が維持されることが重要だ」とし、家計の債務負担が一段と高まることに警戒感を示した。

 一方、公認預金銀行(ADI)を対象とした期間3年の低金利タームローン(証書貸付)制度については、6月末で打ち切る方針を維持。また、次回会合(7月6日)で、3年国債利回り目標を24年4月満期に据え置くか、または、次の24年11月満期に延長するかどうか検討する方針も据え置いた。

 今後の金融政策の見通しについては、「インフレが持続的に2-3%の物価目標の範囲内に収まると確信するまで、政策金利を引き上げない」とのフォワードガイダンス(金融政策指針)を維持。さらに、「インフレ率が物価目標に収まるには賃金が大幅に上昇する必要があり、そのためには雇用が拡大し、タイトな雇用市場に戻る必要がある。われわれは少なくとも24年まで政策金利が引き上げられる状況にはならないと見ている」とし、金融緩和スタンスを維持する方針を改めて示した。

 ロウRBA総裁は、賃金と失業率を金融政策の前面に出し、失業率が5%を下回ることが賃金の上昇を引き起こすとの考えを示している。4月失業率は5.5%と、3月の5.7%を下回り、6カ月連続で低下(改善)したが、まだ、20年のパンデミック初期の水準を上回っている。

 RBAは5月7日に最新の四半期インフレ報告書を発表したが、失業率の見通しを21年末時点で約5%に低下し、22年末時点で約4.5%になると予想している。GDPの見通しについては、21年が4.75%増、22年は3.5%増と予想。また、インフレ率については、「4-6月期に一時的に3%超の上昇と、物価目標(2-3%上昇)を超えるが、21年は1.5%上昇、23年半ばに2%上昇になる」と予想している。これらの予想は今回の会合でも変わっていない。

 次回会合は7月6日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ