松屋R&D・後藤秀隆社長にインタビュー――縫製の自動化に強み

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2021/8/18 9:33

 松屋アールアンドディ(=松屋R&D、7317・M)は縫製自動機の開発・製造・販売のほか、血圧計腕帯、カーシート、エアバッグなどの製造・販売を手掛ける。同社は縫製工場、自動車部品メーカーではなく、縫製工程を自動化する独自技術を生かした幅広い事業を推進している点が特徴。自動車、医療、セーフティシステムなどの分野の拡大が期待され、業績は急成長する機運にある。同社の現状と今後について後藤秀隆社長に聞いた。

省人化の流れに乗り成長へ

 ――御社の事業、ビジネスモデルについて教えてください。

 「当社はミシンメーカーでも、単なる縫製工場でも、自動車部品メーカーでもありません。長年にわたり縫製の自動化に注力し、あらゆる縫製の自動化、省人化を目的に、航空、ヘルスケア、自動車の安全装置(エアバッグ、シートベルト)など、幅広い分野で裁断から縫製までの全工程を自動化する縫製自動機の開発、製造、販売に実績を積み重ねてきました。当社の縫製用自動機、縫製ラインの自動化は競合がない、独自製品です。国内外のエアバッグメーカーにはほぼ導入してもらっているほか、オムロン(6645)からは血圧計の腕帯の製造にも使ってもらっています」

 「ビジネスモデルは、顧客に自動機を購入してもらい、当社子会社の松屋ベトナムに設置し、子会社が製品を製造して顧客に納入するというものです。当社は設備投資費用が掛からずに済むため、低リスクで事業展開できます。また、顧客も低コストで生産できるというメリットがあります」

 ――前3月期は連結売上高104億100万円(前々期比20.5%増)、営業利益8億3700万円(同2.1倍)と好調でした。

 「縫製自動機事業は新型コロナウイルスの影響で人手が介在しない製造方法が注目され、設置を伴わない海外向け製品、国内向け製品の販売が伸びています。半面、ウィズコロナ、アフターコロナを見据え、感染症対策分野の縫製品事業に注力し、事業会社、厚生労働省から受注したアイソレーションガウンの受注が増加したことで、その生産に経営資源を集中させています。そのほか、縫製品事業は健康管理、疾病予防の意識が高まりから血圧計腕帯の販売が好調。カーシート、エアバッグも順調に推移しています」

 「また、今期の第1四半期においても、売上高14億2300万円(前年同期比32.0%増)、営業利益1億1100万円(同89.3%増)と継続して好調を維持しています。収益認識会計基準の適用により売上高は伸び悩んでいるように錯覚してしまいますが、血圧計腕帯、カーシート、エアバッグなどの数量は昨年より大きく増えており、今後もベトナム生産への移管は進んでいくものと思っています。また、株価水準としてもまだまだわれわれの成長戦略が正しく理解されていないと感じており、国内外へのIR活動を通じて情報発信もより積極的に行っていきたいと思います」

リハビリ関連事業に進出

 ――新事業展開に積極的ですね。

 「リハビリ関連事業に進出するため、Forbes誌でも紹介されたポーランドのグローバル医療機器メーカーEGZOTech(EGZO)社と日本総代理店契約を締結しました。EGZO社のEMG(表面筋電図)を利用したリハビリ機器は、現在のロボットスーツとは違い、脳梗塞(こうそく)のリハビリに回復実績があり、現状の介護では3~4人の補助が必要となるところ、同機器を利用すれば補助の必要もなくなります。高齢者の筋力向上から、リゾート感覚でリハビリし、認知症の予防にも大きな効果を発揮します。既に数社から問い合わせがあって、近日中に大手の脳梗塞リハビリセンターで試用展示する予定です。将来は自社でリハビリセンターの展開も視野に入れています」

 「また、ドローン(小型無人飛行機)用エアバッグの実用化に向けて開発を進めております。ドローンは配達用などの市場が拡大しており、今後、安全装置としてドローン用エアバッグの需要増が予想されます。今期中に空モビリティー用エアバッグの実証実験を予定し、早期の事業化を目指します」

 ――将来のビジョンはいかがですか。

 「当社の技術、システムを利用すれば、同じものを製造しても、安く高品質にできるということの認知をより一層広げ、さらなる顧客層の拡大を目指します。また、自動化システムの進化、リハビリ関連事業、ドローン用エアバッグなどの新事業に加え、ウェアラブルセンサー、循環器疾患など医療分野にも展開していきます。また、ベトナムにおいても縫製受託を拡大していますが、これをポーランド、ルーマニア、メキシコなど他の地域にも展開していき、ベトナムと同規模の売上に持っていくことも考えています。既にポーランドには拠点の開設を計画しています。そのためにも優秀な人の採用をどんどん進めていく予定です」

 「そのほか、大手企業との業務提携やM&A(企業の合併・買収)を積極的に実施し、売上高および利益をさらに拡大させていくことも同時並行で進めていきます。これら複数の事業を、スピード感を持って並行して進め、各分野で圧倒的な地位を確立し、将来的にはアジア域で1800億円、ヨーロッパ域で1000億円、中南米で1000億円を目指していきたいと思います」

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