パウエルFRB議長、ジャクソンホールで講演―年内テーパリング開始を支持、早期利上げは否定

経済

2021/8/30 8:51

<チェックポイント>

●インフレ加速とデルタ株感染の雇用・景気へのリスクは一時的

●現時点での金融引き締めは経済に永続的な害を及ぼす

●テーパリング後も長期国債の保有が金融緩和をサポート

 27日、米ワイオミング州で毎年1回開かれるカンザスシティー連銀主催の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で、オンライン配信を通じてパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が講演した。この中で、同議長は年内のテーパリング(量的緩和の段階的縮小)開始を支持する考えを明らかにした。

 同議長は、「20年12月に資産買い入れに関するフォワードガイダンス(金融政策の指針)を発表して以降、われわれは雇用の最大化と物価安定の目標に向けて大幅な進展が見られるまで、現在の資産買い入れペース(月額1200億ドル)を継続すると述べてきたが、私の見解では、インフレについては<実質的なさらなる進展>というテストに合格し、最大雇用に向けて明確な進展も見られた」と指摘。

 また、「(大半の委員がテーパリングの年内開始を支持した)7月FOMCで、私は大半の委員と同様に、経済が予想通りに大きく進展した場合、年内に資産買い入れペースを落とし始めることが適切であると考えた」と述べた。

 テーパリング完了後の出口戦略については、「より長期の国債を保有することが引き続き金融緩和をサポートし続けることになると考える」と述べ、保有国債の満期償還金を再投資する、いわゆるロールオフ(過剰流動性を吸収するための不胎化政策)を行うことを示唆した。

 市場ではテーパリング終了後、FRBはインフレ加速を抑制するため、利上げの議論に移るとみている。最新のFOMCメンバーの金利予測では早ければ22年、遅くとも23年末までに2回の利上げが予想されている。

 しかし、パウエル議長は講演で、「今後の資産買い入れの減額のタイミングとペースは、利上げのタイミングについて直接的なシグナルを伝えることを意図していない」とした上で、「われわれはこれまで経済が雇用の最大化と合致する状態に達し、インフレ率が物価目標の2%上昇に達し、しばらくの間、2%上昇をやや超える軌道に乗るまで、FF金利の誘導目標を現在の水準に維持し続けると言ってきている」とテーパリングと利上げの相関性を否定し、早期利上げには慎重な構えを示した。

 背景には最近のインフレ加速は一時的とする見方と労働市場のたるみ(労働力などの余剰)、デルタ株の感染拡大が続いていることがある。パウエル議長は講演で、「経済の急速な再開はインフレの急激な上昇をもたらした」としつつも、「しかし、インフレ上昇が一時的であることが証明される可能性が高く、インフレ懸念は和らげられる」とした。

 その上で、「タイミングが悪い金融引き締めは、雇用や他の経済活動を不必要に遅らせ、インフレを望ましい水準よりも低く押し下げる」とし、さらに、「現在、労働市場にかなりのたるみが残っており、パンデミック(世界的大流行)が続いているため、こうした間違いは特に有害となる。失業の長期化は労働者と経済の生産能力に永続的な害を及ぼす可能性をわれわれは知っている」と早期利上げ観測にくぎを刺した。

 労働市場については、「ここ数カ月の労働市場は改善が進み、7月雇用統計は強い内容となり、一段と進展が見られる。今後、強い雇用創出が続くことが予想される」とし、「ワクチン接種が増え、学校が再開し、失業給付の割り増しが終了するにつれ、求職活動を阻んでいるいくつかの要因が薄れる可能性がある。デルタ株は短期的なリスクを示し、今後、強い雇用創出が続くことが予想される」とした。パウエル議長はデルタ株感染拡大の雇用や景気に対するリスクは一時的と見ている。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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