<新興国eye>カンボジア、石炭火力発電所の新規開発停止

新興国

2021/11/19 15:15

 カンボジア鉱業エネルギー省のスイ・セン大臣は、在カンボジア英国大使との面談で、今後新規の石炭火力発電所の建設を行わない方針を伝えました。英国で開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)を意識した発言と見られます。

 カンボジアの20年の電力供給の内訳は、国内での発電量が68.1%、ベトナム、タイ、ラオスからの輸入電力が31.9%となっています。国内の内訳は、水力41.0%、石炭火力46.8%、石油火力8.0%、太陽光発電3.3%、バイオマス0.9%となっており、石炭火力が最も高い比率を占めています。

 また、現在、石炭火力発電所2カ所(合計1400メガワット)の建設が進められています。このため、当面、石炭火力発電所の全面的廃止を行うことは難しいものと見られます。しかし、設備容量を見ると、既存の石炭火力発電所の合計が675メガワットで、建設中を加えても2075メガワットであり、先進国等と比べると非常に小さい規模です(日本の石炭火力発電所の総設備容量は20年時点で約4万8000メガワット)。

 スイ・セン大臣は、今後、発電燃料を液化天然ガス(LNG)や水素に転換していくとともに、太陽光発電等の再生可能エネルギーを振興するとしています。現在、アジア開発銀行の支援を受けて策定中の電力開発計画においては、再生可能エネルギーによる発電の比率を59%にまで高める方向で検討中であるとのことです。これは、これまでの開発計画に比べると温室効果ガスの排出量を34%減少させる効果があるとしています。

 カンボジアでは太陽光発電所の計画・建設が進んでおり、23年までに新規の太陽光発電所(合計495メガワット)が完成する見込みで、太陽光発電の全体に占める割合は20%程度にまで高まるものと見られます。

 カンボジアは、洪水や干ばつなど気候変動の影響を受けやすい国の一つであり、電力セクターでの再生可能エネルギー比率の上昇を目指すことは、カンボジアとっても重要な政策となってくるものと見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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