<新興国eye>ロシア中銀、政策金利を3ポイント追加引き下げ

新興国

2022/5/2 9:34

 ロシア中央銀行は4月29日の金融政策理事会で、景気を支援するため、主要政策金利である資金供給のための1週間物入札レポ金利と資金吸収のための1週間物入札預金金利をいずれも前回会合時と同じ3.00ポイント引き下げ、14.00%とすることを決めた。利下げ幅は市場予想の2.00ポイントを上回るサプライズとなった。

 中銀はロシアによるウクライナへの軍事侵攻の開始(2月24日)と、それに伴う西側諸国の対ロ経済制裁によるインフレ圧力が一段と高まる見通しとなったことに加え、ロシアルーブルが一時30%も急落したことを受け、2月28日の臨時会合で、主要政策金利を9.50%から一気に20.00%に引き上げた。また、同時に資本流出規制や株式市場の閉鎖など緊急対策も講じている。前回4月8日の2回目の臨時会合で、景気支援のため、3.00ポイントの大幅利下げを決め、利下げサイクルに転換した。利下げは2会合連続となる。

 中銀は会合後に発表した声明文で、追加利下げを決めたことについて、「ロシア経済の外部環境(ウクライナへの侵攻に伴う対ロ制裁)は依然として困難であり、経済活動を大幅に制約している」と景気支援の必要性を強調。その上で、「物価と金融市場の不安定リスクはもはや上昇していないため、主要政策金利の引き下げが可能になった」としている。

 インフレ懸念については、「最近の経済指標をみると、ルーブル高の進行と個人消費の冷え込みを反映し、物価上昇ペースが鈍化している」との認識を示した上で、「24年の物価目標の達成を目指す」としている。今回の会合で発表した最新の中期経済予測によると、22年のインフレ率は18-23%上昇に減速し、23年にはさらに5-7%上昇に低下。24年には物価目標の4%上昇に収束すると見ている。

 今後の金融政策については、「(景気やインフレの)経済動向が標準予測に沿って進展した場合、中銀は年内に主要政策金利を引き下げる余地がある」とし、利下げサイクルを継続する可能性を示唆している。

 景気の見通しについては、「ロシア経済は22年3月から低下し始め、経済指標は消費と企業活動の縮小を示している。貿易と金融の制限により、輸入の減少ペースが輸出の減少ペースを上回っており、企業は生産と流通でかなりの困難に直面している」としている。ロシア企業は対ロ制裁による輸入資材・部品不足などサプライチェーンの寸断の影響を強く受けている。

 最新の中期経済予測によると、22年のGDP(国内総生産)は8-10%減と、供給サイドの問題でマイナス成長となると予想。ただ、23年は経済の構造変化により、ロシア経済は徐々に成長し始め、23年10-12月期には前年比4.0-5.5%増になると見ている。ただ、23年全体では3%減から横ばいで、24年に2.5-3.5%増に回復すると予想している。

 次回の定例会合は6月10日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 WTI原油<1671.T>、ガス<1689.T>、原油<1690.T>、

 野村原油<1699.T>

提供:モーニングスター社

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