英中銀、0.25ポイント利上げを決定―4会合連続

経済

2022/5/6 10:51

<チェックポイント>

●9人の委員のうち、3委員が0.50ポイント利上げを主張

●9月から保有社債の売却を開始―23年末終了目指す

●インフレ率は10-12月期に10%超でピーク―前回会合時8%超から引き上げ

 イングランド銀行(BOE、英中銀)は5日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を0.25ポイント引き上げて1.00%とすることを6対3の賛成多数で決めたことを明らかにした。利上げは4会合連続となる。この結果、政策金利は09年2月5日以来13年ぶりの高水準に戻った。

 今回の利上げ幅は市場予想通りだったものの、9人の政策委員のうち、3委員が0.50ポイントの大幅利上げを主張しており、タカ派(インフレ抑制重視派)が一気に3人も増えた。

 一方、0.25ポイントを支持したのはアンドリュー・ベイリー総裁を含む6委員で、「経済予測期間の最終時点(25年)で供給過剰が高水準であることやインフレ率が物価目標を大きく下回る見通しを考慮した」とし、インフレ抑制の必要性を認識しながらも、大幅利上げによる英国の景気のリセッション(景気後退)懸念にも配慮している。

 また、政策金利が1.00%に達したことを受け、QE(量的緩和)プログラムの金融資産買い取り制度(APF)を通じて、これまで買い入れた保有資産(国債と社債)の減額を開始する方針も明らかにした。声明文では、「このバランスシートの削減について検討を開始し、8月に資産売却の方法と時期について結論を示す」としている。BOEは2月会合でのバランスシートの削減方針を再確認した上で、「保有社債の直接売却を22年9月から開始する」とした。保有社債の売却は、「23年末までに完了(完全売却)する」としている。

 BOEは今回の会合でも追加利上げを決めた理由について「ロシアのウクライナ侵攻を受けて、世界的なインフレ圧力は急激に高まっており、世界と英国の成長見通しを著しく悪化させている。また、ロシアのウクライナ侵攻と中国でのコロナ感染拡大により、サプライチェーンのさらなる混乱懸念も高まっている」とし、インフレ加速と景気悪化の両方のリスクに対応するためとしている。また、「現在の労働市場のひっ迫(労働者不足)や、(エネルギー費用の上昇など)強い国内コスト、インフレ圧力が継続するリスクも考慮した」とし、外部要因に加え、国内要因のインフレ圧力も利上げの必要性を高めたとしている。

 今後の金融政策の見通しについては、「最新の経済見通しに基づき、大半の委員は今後数カ月、金融政策をさらに引き締めることが適切であると判断している」とし、利上げサイクルの継続を示唆した。

 当面の景気見通しについては、「1-3月期GDP(国内総生産)は前期比0.9%増と、前回2月の経済予測(横ばい予想)を上回り、4-6月期も同水準で推移する」としている。21年10-12月期は同1.3%増に上方改定され、19年同期と一致し、コロナ禍前の水準に戻る。ただ、中期見通しについては、「英国の成長率は経済予測期間の前半に急激に減速する。主に、世界のエネルギーなどコモディティ(国際相場商品)価格の急激な上昇により、家計の実質所得と企業の利益率に重大な悪影響を及ぼすためだ」とリセッション懸念を示した。

 インフレ見通しについては、3月のインフレ率が前年比7.0%上昇(2月は同6.2%上昇)と、30年ぶりの高い伸びだったが、「最新の経済予測によると、22年4-6月期にインフレ率は前年比9%超上昇、22年10-12月期のピーク時には同10%超に達する」と予想している。

 政策金利の見通しは、5月金融政策報告書によると、23年半ばまでに約2.5%に達するが、予測期間の最終時点(25年)で2%に戻ると予想。MPC委員の政策金利見通しは22年4-6月期に1.0%(前回2月予測は0.7%)、23年4-6期に2.5%(同1.4%)、24年4-6期に2.4%(同1.4%)、25年4-6期に2.0%となっている。

 BOEの次回会合は6月16日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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