ECB、7月会合での0.25ポイント利上げを表明―9月利上げペース拡大を示唆

経済

2022/6/10 10:22

<チェックポイント>

●量的金融緩和は7月1日で終了

●22年と23年のインフレ見通しを引き上げ

●22年と23年の成長率見通しを下方修正

 欧州中央銀行(ECB)は9日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.00%に、下限の中銀預金金利をマイナス0.50%に、上限の限界貸出金利を0.25%に、いずれも据え置いたが、次回7月21日会合で0.25ポイント引き上げることを全員一致で決めた。利上げが実施されれば、11年ぶりとなる。また、7月1日に非伝統的手段である資産買い入れプログラム(APP)による量的金融緩和を終了することも確認した。

 ECBは次回会合での利上げ開始の理由について、インフレの急加速を挙げている。インフレ率(全体指数)は4月の前年比7.4%上昇から5月は同8.1%上昇に加速。声明文では、「インフレ圧力が強まっており、しばらくの間、望ましくないほど上昇する状況となる」と指摘し、強い警戒感を示した。

 今回の会合からECBはインフレ見通しを悪化方向に引き上げた。22年の年間インフレ率を6.8%上昇、23年は3.5%上昇と予想。前回3月予想のそれぞれ5.1%上昇と2.1%上昇から大幅に引き上げた。ただ、24年は2.1%上昇に落ち着くと予想している。

 7月以降の利上げの可能性についても、「9月会合で再び主要金利を引き上げる」「9月以降、現在の評価に基づき、徐々に持続的な利上げの道筋が適切である」との考えを示した。9月の利上げ幅については、「中期的なインフレ見通しが持続、または悪化する場合、9月会合でより大きな引き上げが適切となる」とし、0.25ポイントを上回る大幅利上げの可能性に含みを持たせている。

 景気見通しについて、今回の会合で、22年の成長率を前回予想時の3.7%増から2.8%増に、23年も2.8%増から2.1%増にそれぞれ引き下げた。対照的に24年は2.1%増と、前回予想時の1.6%増から引き上げた。

 APP終了後のバランスシート(保有資産)について、満期償還金の元本の全額を再投資することにより、利上げ開始後も長期にわたり、維持する方針を再確認した。バランスシートを維持する期間について、ECBは前回会合時と同様、「主要金利の引き上げを開始した日を過ぎて長期にわたり、また、良好な流動性条件と十分な金融緩和を維持するために必要な限り続ける」としている。

 このほか、ECBは銀行による中小企業や家計向け融資の拡大を目指すTLTRO3(貸出条件付き長期資金供給オペ)の貸出条件の緩和措置も据え置いた。その上で、前回会合時と同様、「同制度で適用される貸出条件は6月に終了する」とした。

 次回の会合は7月21日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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