【為替本日の注目点】ECB0.75ポイントの利上げを決定

為替

サーチナ

2022/9/9 10:48

 ドル円は欧州市場からNYの朝方にかけて143円台半ばを下回っていたものの、パウエル議長のタカ派的な発言から上昇。144円43銭まで上昇したが上値は追えず。ECBが0.75ポイントの利上げを決定し、ユーロドルは下げから反転。想定内であったこともあり、上値は1.0030近辺と限定的。株式市場は続伸。パウエル議長の発言に驚きもなく、3指数とも終盤に上値を伸ばす。債券は反落。長期金利は3.31%台に上昇。金は続落し、原油は反発。

マーケット情報

新規失業保険申請件数 → 22.2万件

7月消費者信用残高 → 23.811b

ドル/円 143.41 ~ 144.43

ユーロ/ドル 0.9931 ~ 1.0030

ユーロ/円 143.18 ~ 144.28

NYダウ +193.24 → 31,774.52ドル

GOLD -7.60 → 1,720.20ドル

WTI +1.60 → 83.54ドル

米10年国債 +0.054 → 3.317%

本日の注目イベント

中 中国8月消費者物価指数

中 中国8月生産者物価指数

米 エバンス・シカゴ連銀総裁講演

米 ウォラーFRB理事講演

米 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁講演

加 カナダ8月就業者数

加 カナダ8月失業率

 RBA、BOCに続いてECBも大幅利上げに踏み切りました。ECBは昨日の政策委員会で通常の3倍となる0.75ポイントの利上げを決め、中銀預金金利も0.75%に引き上げられました。この決定を受けユーロドルは上昇しましたが、市場の想定内であったため、上値は限定的でした。3中銀が連日利上げに踏み切り、しかも「想定された利上げ幅の上限」を採用したことで、今月20-21日のFOMCでの利上げ幅も「0.75ポイントで決まった」という印象です。

 ECBは声明で、「この大きな一歩は現在の極めて緩和的な政策金利水準からインフレ率を適切な時期に目標の2%に戻す金利水準への移行を前倒ししたものだ」とし、「今後数回の会合でさらなる利上げを想定している」と表明しました。ラガルド総裁も会見で、「利上げは全会一致だった。0.75ポイントの利上げは標準ではない」とした上で、「断固とした行動を取る必要があった」と説明していました。また、「会合ごとに見直す指標が大幅な利上げが必要だと示唆するなら、そうするだろう」と明言。利上げが想定される今後「数回」とは何回を指すのかとの質問には、「恐らく今回を含めて2回を上回るが、5回は下回るだろう」と答えています。(ブルームバーグ)ECB内部には大幅利上げが今後域内の景気をさらに下振れさせるリスクもあり、反対の意見もありましたが、今回の利上げ幅を「0.5ポイント」ではなく、「0.75ポイント」に決めたのは、ECB内部でインフレ高進への警戒感がさらに強まった背景があります。8月の消費者物価指数(CPI)が「9.1%」と過去最高を更新し、今後冬場に向えばエネルギー価格の上昇からインフレ率が一段と高まる可能性もあり、「背に腹は代えられない」と判断したとみられます。これでECBはFRBと足並みを揃え、「インフレ抑制を最重要課題」に掲げ、景気の減速には目をつぶる政策に踏み出したと言えます。

 パウエル議長は、20-21日のFOMC会合を前にし、最後の発言になるだろうとみられる講演を、ワシントンで開かれた金融政策関連会議で行いました。議長は、「われわれはこれまでと同様、直ちに、真っすぐに、力強く行動する必要がある」と述べ、「同僚と私は、このプロジェクトに強くコミットしており、根気よく続けていく」と述べています。ジャクソンホールでの発言と大きな相違はありませんでしたが、今回の発言は何やら出陣式での「決意表明」のような印象で、パウエル氏自身、自分を鼓舞しているように感じました。上でも述べましたが、これで「0.75ポイントの利上げは決まり」で、問題のその先の政策スタンスについて、会合後にどのような言及があるかという点に関心が移ります。また、0.75ポイントの利上げはすでに市場には織り込まれたと受け止めています。

 ドル円は145円に1銭届かない水準まで買われた後、やや上値を重くしていますが、それでも下値は143円台半ばまでとなっています。急激な円安を受けて、財務省と日銀、金融庁は8日、「3者会合」を開き、協議を行いました。神田財務官は、「投機的な動きも背景に、一方向で急速な円安の進行が見られる」とし、「政府としては、動きが継続すれば、あらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある」と述べました。145円付近まで円が売られたことで、これまでよりも強めの「口先介入」があると予想していましたが、想定内の発言でした。市場の反応もほとんどなく、個人的には150円を超えれば、実際の行動が見られるのではないかと予想しています。もっとも、それで流れを変えられるとは思いませんが、やはり、鍵となるのは米財務省のスタンスが「ドル高は行き過ぎ」といった方向に変わるかどうかです。

本日のドル円は143円~144円90銭程度を予想します。

(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_academy01.htm

・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_calender.htm

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ