【為替本日の注目点】ドル円、欧州で141円台後半まで下落
ドル円はアジア・欧州市場で売られた流れを引き継ぎやや円高方向に。朝方には142円17銭まで下げたが勢いはなく142円半ばを超える水準まで反発。ユーロドルは反発。この日は終始1.00台で推移し、1.0062まで上昇。株式市場は3指数が揃って3日続伸。ダウは377ドル上昇し、ナスダックも2%を超える上昇。債券はほぼ横ばい。長期金利は3.31%台で推移。金と原油はともに買われる。
マーケット情報
ドル/円 142.17 ~ 142.80
ユーロ/ドル 1.0032 ~ 1.0062
ユーロ/円 142.74 ~ 143.44
NYダウ +377.19 → 32,151.19ドル
GOLD +8.40 → 1,728.60ドル
WTI +3.25 → 86.79ドル
米10年国債 -0.007 → 3.310%
本日の注目イベント
英 7月貿易収支
ドル円はややドルが売られ、欧州市場では一時141円80銭前後まで下げる場面もありました。先週金曜日、黒田日銀総裁が官邸で岸田首相と会談し、首相からは特段の指示や要望はなかったとしながらも、「為替相場が1日で2円も3円も動くのは急激な変化と認識している。急激な為替変動は企業の不確実性を高め好ましくない」と述べたことがドル売りを誘いドル円は下落。その流れが欧州からNYにも伝播した格好でした。先週1週間を振り返ると、140円台を回復したドル円は144円99銭まで一気に買われ、その後141円台後半まで売られる展開となり、かなり荒っぽい動きを見せたことになります。
FOMCを前に、主要中銀が揃って大幅な利上げを決定したことも影響し、パウエル議長を始め多くのFOMCメンバーが「タカ派的な発言」を行ったことがドル高に勢いを付けたようです。現時点でも次回会合では0.75ポイントの利上げは確実と予想していますが、すでに市場にはほぼ織り込まれたと考えます。先週金曜日も、数人のFOMCメンバーによる発言がありました。ウォラーFRB理事は講演で、「インフレはあまりに高すぎる水準にあり、インフレが下方向に意味ある形で持続的に推移しつつあるかどうか判断するのは時期尚早だ」と述べ、「政策金利が明確に需要を抑制する水準になるよう、9月20-21日の次回会合で大幅な利上げを支持する」と語っています。ここで言う「大幅な利上げ」は、0.75ポイントを指すことは言うまでもありません。
またセントルイス連銀のブラード総裁も、「75bpの方向に傾いたところ、先週2日に発表された雇用統計の数字はまずまず良好だった」とし、来週発表される消費者物価指数(CPI)でインフレ抑止の進展が示される可能性はあるが、「単一のデータに次回会合で決定を左右させるわけにはいかない。従って、現時点では75bpへの傾斜をより強めているところだ」と語っています。ブラード総裁はまた、「こうした利上げの前倒しを試みる全般的な戦略は奏功しており、インフレに間もなく低下圧力を加える政策金利水準に到達し得る状況をもたらす」と述べ、「私の考えでは、実施は早ければ早いほど良い傾向にある」と続けています。(ブルームバーグ)ブラード総裁は今年のFOMCでの投票権を有しています。一方、FOMCメンバーの中では最も「ハト派寄り」ではないかと思える、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は、「米インフレ率は依然として高すぎ、米金融当局には金融緩和の解除を継続する単純明快な理由がある」としながらも、金融政策の急な引き締めが裏目に出ることもあり得ると警鐘を鳴らし、「重要な問いは、それをどの程度、どれだけ早く実施していくかだ」と話しています。
このように、次回会合では、6月、7月に続き3会合連続で0.75ポイントの利上げを実施する可能性が高いとみていますが、この急激な利上げが景気を抑制することは明らかだと思われ、その効果がいつ明確に表れて来るかが焦点です。明日13日(火)には8月のCPIが発表されますが、総合CPIは「8.0%」と予想されており、7月の「8.5%」(いずれも前年同月比)から大きく鈍化するとみられています。ただ、それでも会合では0.75ポイントの利上げを回避することにはならないだろうとみられます。ブラード総裁の言うように、「単一のデータでは判断できない」ことと、好調な労働市場の存在が挙げられます。SFシスコ連銀の分析では、「インフレ率は2025年の早い時期までに金融当局の目標である2%まで下がる見通しだ」としていますが、仮に見通し通りだとすれば、あと3年もかかることになります。
ウクライナ軍が攻勢を強め、ロシア軍が主要都市から撤退を余儀なくされているとの報道が相次いでいます。ウクライナ軍の司令官は、同国が今月に入りこれまでに奪還した領土は3000平方キロメートル余りになると発表しています。米国から供与された「ハイマース」がその威力を発揮しているとみられ、遠隔地からロシアの弾薬庫など重要な拠点を爆破していることが影響しているようです。これから厳しい冬に向うウクライナですが、この戦争は今年中には終結しないだろうとの見方が一般的なようです。
本日のドル円は141円50銭~143円50銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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