【為替本日の注目点】ユーロ円約8年ぶりに145円台半ばへ
ドル円は東京時間夕方には143円台半ばまで上昇する場面もあったが続かず。NYでは今夜発表のCPIを見極める雰囲気の中、ドルは下げ基調となり再び142円台前半へ。ユーロドルはECBメンバーのタカ派発言から買い戻しが進み、欧州市場では1.0198まで上昇。ユーロは対円でも145円台半ばまで続伸。株式市場は底堅く推移し、3指数は揃って4日続伸。ダウは300ドル程上昇し、ナスダックも買われた。アップルが上昇をけん引。債券は反落。長期金利は3.35%台へ上昇。金と原油は続伸。
マーケット情報
ドル/円 142.17 ~ 142.87
ユーロ/ドル 1.0105 ~ 1.0163
ユーロ/円 144.15 ~ 144.84
NYダウ +299.63 → 32,381.34ドル
GOLD +12.00 → 1,740.60ドル
WTI +0.99 → 87.78ドル
米10年国債 +0.048 → 3.358%
本日の注目イベント
豪 豪9月ウエストパック消費者信頼感指数
豪 豪8月NAB企業景況感指数
独 独8月消費者物価指数(改定値)
独 独9月ZEW景気期待指数
欧 OPEC月報
英 英8月ILO失業率
米 9月消費者物価指数
米 8月財政収支
米 米中間選挙予備選(デラウェア、ニューハンプシャー、ロードアイランド州)
ドル円は昨日の夕方、143円台前半から143円50銭まで急伸する場面がありましたが、勢いは続かず、その後はじり安の展開でした。今夜発表の8月の消費者物価指数(CPI)の結果を見極めたいとする雰囲気の中、売買も低調な模様で、結局昨日の水準に戻って来ました。一方ユーロドルは大きく買われ、欧州市場では一時1.0198まで上昇。ECBメンバーのタカ派的な発言をきっかけに大幅に上昇し、約4週間ぶりの高値を付けました。ユーロは対円でも145円63銭前後まで買われ、2014年12月以来、約8年ぶりの高値を付けています。
ECB政策委員会メンバーのシクルーナ・マルタ中銀総裁はNBCとのインタビューで、「今回が唯一の利上げではない。あと数回あるだろう」と述べましたが、ただ、「0.75ポイントの利上げ幅はECBにとって標準となるわけではない」とも述べています。また、ECBのシュナーベル理事は会議のスピーチで、インフレ率を目標の2%に戻すために、「今後数回の政策委員会会合で追加利上げをすることになるだろう」と語っています。これらタカ派発言からユーロを買い戻す動きが加速されましたが、先週0.75ポイントという、これまでに行ったことのない大幅利上げを決めた後のラガルド総裁の発言からは容易に想定される内容ではありました。
ユーロドルは先安感が根強く、投機筋のユーロ売りポジションも大きく積み上がっていることから、ストップロスの買いが相場を押し上げる展開も想定されます。ただ昨日は1.02台という節目を前に反発が止まりましたが、これは「日足の雲の下限」がこの付近にあり、これに上昇を抑えられた側面も大きかったと思います。この「日足の雲」はユーロドルにとって大きな存在であり、また意味もあります。何しろ、ユーロドルがこの雲の上方で推移していたのは、2021年6月までさか上らなければなりません。その間何度も雲の上限突破を試みましたが、ことごとく押し戻される展開が続いており、雲全体が非常に強い「抵抗帯」となっています。反対に、この雲を明確に上抜けすることが出来ればユーロドルは大きく上昇する可能性がありますが、現在の雲の上限は1.0370前後にあり、この水準を超えられるかどうかといったところです。ただ、今回のユーロの反発はECBメンバーのタカ派発言とショートの買戻しが要因で、これから冬場に向いエネルギー問題が景気に与える影響が大きく、今後も大幅な利上げが続くようなら域内の景気はさらに悪化させることも予想されます。ユーロ圏には少なくとも米国のような景気の底堅さや経済基盤はないと言えるでしょう。
NY連銀が12日に発表した最新の消費者調査で、インフレ期待が大幅に低下したことが明らかになりました。3年後のインフレ期待は、前月の「3.2%」から「2.8%」に低下し、1年後についても7月の「6.2%」から「5.7%」に低下していました。3年後のインフレ期待はこれで4カ月連続の低下となり、実際ガソリン価格はかなり下がっていることから、FRBの積極的な利上げを評価し、同時にその手腕に期待していることもうかがえます。
昨日もウクライナ情勢について触れましたが、ウクライナ軍の反攻が成功裏に進んでいることから、今朝の報道では「ウクライナ、かつては考えられなかった勝利が現実の領域に」といった見出しの報道がありました。「ウクライナ軍による同国北部での反転攻勢の脅威的な速さと成功を受け、2月のロシア侵攻が始まった当時ではほとんど考えられなかった可能性が浮上している。ロシア軍が敗北し、崩壊さえあり得る」と伝えています。米CIA長官や国防長官を務めたレオン・パネッタ氏はブルームバーグの番組で、「極めて重要であるとともに危険でもあると思う」と語り、「危険なのは、プーチン氏が追い込まれることで反撃しなくてはならなくなるからだ」と指摘し、敗北リスクに直面するロシアが、戦術核による攻撃の可能性を含め、戦争をエスカレートさせる恐れがあると説明しています。
本日は21時30分に米8月のCPIが発表されます。予想は現時点で「8.1%」と、7月の「8.5%」よりも鈍化しているとみられていますが、コアCPIでは逆に上昇しているとの予想です。レンジ予想は141円50銭~143円50銭程度といったところでしょうか。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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