<新興国eye>ハンガリー中銀、政策金利を1.25ポイント引き上げ―今後は利上げサイクル停止へ

新興国

2022/9/28 9:06

 ハンガリー中央銀行は27日の金融理事会で、インフレを抑制し、通貨フォリント安の進行を阻止するため、主要政策金利であるベース金利(準備預金への付利金利)を1.25ポイント引き上げ、13.00%とすることを決めた。利上げ幅は市場予想(1.00ポイント)を上回り、サプライズとなった。

 また、中銀は他の政策金利も同率引き上げた。ベース金利の上下幅(コリドー)の下限を示す翌日物預金金利を12.50%に、上限を示す翌日物有担保貸出金利と7日物有担保貸出金利を各15.50%に、それぞれ引き上げた。新金利は28日から適用される。

 中銀はウクライナ戦争の勃発(2月24日)以降、インフレ抑制のため、ベース金利の引き上げを継続。直近では6月会合で1.85ポイントの大幅利上げを決め、7月12日の臨時会合でも2.00ポイントの大幅利上げを決めている。これで利上げは17会合連続となり、利上げ幅は計12.40ポイントに達し、金利水準も99年12月(14.50%)以来22年9カ月ぶりの高水準となった。

 中銀は追加利上げを決めたことについて、声明文で、前回8月会合時と同様、「長期化するコモディティー(国際相場商品)価格の上昇やエネルギー価格の高騰、欧州の干ばつ被害の影響により、短期的にはインフレ圧力がさらに高まる」とし、強いインフレ懸念を示した。8月のインフレ率は前年比15.60%上昇、コアインフレ率も同19.00%上昇となっており、中銀は、「インフレ観測は高い水準にある」と懸念を示している。

 しかし、中銀は今後の金融政策について、インフレがディスインフレのプロセス(インフレの低下基調)に入る兆候が見え始めたとして、これまでの利上げ継続によるインフレ抑制効果を見守るため、「今回の9月会合の利上げ措置を最後に利上げサイクルを停止することを決めた」としている。利上げ停止について、中銀は、「現在のベース金利の水準によって、金融環境が十分、厳しくなっているため、物価目標の達成が確実となった」としている。

 その上で、中銀は、「引き締め的な金融環境が長期にわたって維持されることで、インフレ観測が落ち着き、物価目標が持続的に達成されることが確実となる。今後は流動性を引き締め、これまでの利上げによる金融政策の効果の浸透をさらに強化することが焦点になる」、また、「そのため、将来、中銀は追加の金融引き締め措置を講じる可能性がある」とし、量的金融引き締め(QT)の追加措置を講じていく考えを示している。

 QT措置ついては、中銀は前回の会合で、利上げ効果を高めるため、今秋から金融システムから流動性を吸収し、短期市場金利を金融政策スタンスと合致させるため、3つの措置を決めている。一つ目は預金準備率の引き上げ(現行の1%から5%に引き上げ)、2つ目は定期的な手形売出オペ(入札)の実施、3つ目は長期の預金ファシリティの導入。市場ではこれらの措置は今回の大幅な利上げとともに通貨フォリント高を狙ったものと見ている。通貨フォリントが急落し、過去最安値を付けていることが背景。通貨安は輸入インフレを押し上げ、インフレ全体を加速させるからだ。

 今回の会合でも中銀は、「フォリントの流動性を大幅に削減することにより、スワップ金利を上昇させ、金融引き締めの環境をさらに強めることが可能になる。これにより、これまでの利上げによるディスインフレ(インフレの低下基調)効果を大幅に高められる」としている。

 次回の金融政策決定会合は10月25日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 上場EM債<1566.T>

提供:モーニングスター社

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