米7-9月期GDP、前期比2.6%増―3期ぶりプラス成長、市場予想も上回る

経済

2022/10/28 9:45

<チェックポイント>

●輸出や政府・国防支出が成長率押し上げ

●個人消費は伸び鈍化―高インフレが消費抑制か

●住宅需要低迷で住宅投資は6四半期連続で減少

 米商務省が27日に発表した7-9月期実質GDP(国内総生産、季節調整済み)・速報値は、前期比年率換算2.6%増と3四半期ぶりにプラス成長となり、市場予想の2.3%増も上回った。

 7-9月期のGDPを支えたのは、輸出や国防支出で、GDP全体の約7割を占める個人消費は1.4%増と、4-6月期の2.0%増から減速し、コロナ禍前の10年間の平均である2.3%増も下回った。GDP成長率寄与度は0.97ポイントと4-6月期の1.38ポイントを下回っており、市場では高インフレが消費を抑制したと見ている。

 成長を支えた輸出は14.4%増となり、21年10-12月期の23.5%増以来の大幅増。他方、GDP押し下げ要因である輸入は6.9%減となった。輸入の伸びが輸出の伸びを大きく下回ったため、貿易赤字は9014億ドルと、4-6月期の1兆356億ドルより縮小し、成長率を押し上げた。輸出を含めた外需のGDP成長率寄与度は2.77ポイントだった。

 また、政府部門(政府消費支出と固定資本形成)は2.4%増と6四半期ぶりに増加。国防費が4.7%増と、20年10-12月期の11.8%増以来の高い伸びとなった。ロシアによる軍事侵攻を受けているウクライナへの支援が急増している。

 対照的に、民間企業投資は8.5%減と、2期連続の減少となった。GDP成長率寄与度もマイナス1.59ポイントとなり、成長率を押し下げた。金利高による借り入れコストの上昇で企業支出が抑えられており、失業者が増大する懸念が強まった。

 民間投資のうち、住宅投資が26.4%減と6四半期期連続で減少している。FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げで住宅ローン金利の急上昇や住宅価格が高騰して需要が冷え込んでおり、建設業者が住宅投資を抑制した。

 また、今後の個人消費の先行きを占う意味で重視される可処分所得の伸びは、インフレ調整前で前期比年率換算6%増と、4-6月期の同5.7%増を上回り、インフレ調整後(2012年価格水準)では1.7%増と、4-6月期の1.5%減から増加に転じた。貯蓄率は3.3%と、4-6月期の3.4%をやや下回り、6四半期連続で低下した。

 インフレ動向を示し、名目GDP伸び率(6.7%増)から実質GDP伸び率を算出するときに使われる物価指数であるGDPデフレーターは、前期比年率換算で4.1%上昇と、4-6月期の9.00%上昇や市場予想の5.3%上昇を下回った。PCE(個人消費支出)物価指数も4.2%上昇と、4-6月期の7.3%上昇を下回った。ガソリン価格の急落が背景。

 FRBが最も重視しているコアPCE物価指数は4.5%上昇と、4-6月期の4.7%上昇から2期連続で減速した。物価上昇の背景には半導体不足やエネルギー、木材・貴金属などのコモディティ(国際相場商品)価格の高騰が続いていることがある。

 市場は、個人消費が弱く、10-12月期は再び減少に転じ、23年までにリセッション(景気失速)に陥る可能性が高いとみている。

提供:モーニングスター社

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