<新興国eye>ロシア中銀、予想通り金利据え置き―インフレ見通しの改善を受けて

新興国

2022/10/31 9:46

 ロシア中央銀行は先週末(28日)の金融政策理事会で、インフレを抑制し、景気を支援するため、主要政策金利である資金供給のための1週間物入札レポ金利と資金吸収のための1週間物入札預金金利を7.5%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。

 中銀はロシア・ウクライナ戦争の勃発(2月24日)と、それに伴う西側の対ロ経済制裁により、インフレ圧力が一段と高まったことや、ルーブルが一時30%も急落したことを受け、2月28日の臨時会合で、主要政策金利を9.5%から一気に20%に引き上げた。また、同時に資本流出規制や株式市場の閉鎖など緊急対策も講じた。

 しかし、4月8日の臨時会合から景気を支援するため、3ポイントの大幅利下げを決めて利下げサイクルに転換。その後、同29日と5月26日の会合でも3会合連続で同率利下げ、6月と7月も同率(1.5ポイント)利下げを決めたが、前回9月会合では利下げ幅を0.5ポイントに抑えている。この結果、4月以降の利下げ幅が計12.5ポイントに達し、ウクライナ戦争開始後の緊急利下げ分(10.5ポイント)を大きく上回った。金利水準は21年12月(7.5%)以来の低水準となっている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、金利を据え置いたことについて、「足元のインフレ率の伸び率は依然として低く、さらに鈍化している」とした上で、「(ウクライナ戦争に伴う予備役兵30万人の)部分的な動員が消費需要の鈍化とインフレ抑制につながる」とし、インフレが改善方向にあることを強調した。また、現時点のインフレ期待は利上げ開始の4月時点の水準に戻り、進展が見られている。ただ、中銀は、「家計や企業のインフレ期待は高く、夏に比べてわずかに上昇した」とし、今後のインフレの先行きを注視したい考え。

 今回の会合で発表した中期経済予測によると、インフレ見通しについては、「金融政策のスタンスを考えると、22年末時点で12-13%上昇(前回会合時は11-13%上昇)、23年は5-8%上昇(同5-7%上昇)に減速。24年には物価目標の4%上昇に収束し、その後は4%上昇で推移する」と見ている。ちなみに、9月のインフレ率は前年比13.7%上昇と、8月の同14.3%上昇を下回り、直近の10月21日時点では同12.9%上昇と、一段と減速。中銀は、「10月の速報値は、現在のインフレ圧力が全体的に低いことを示す」としている。

 景気見通しについては、中銀は、「22年GDP伸び率は3.0-3.5%減(同4-6%減)となるが、23年後半から成長率が持ち直す」とし、前回会合時から成長率見通しを改善方向に修正。23年のGDP伸び率については前年の伸びが高かったため、低めの数値が出る、いわゆるベース効果や生産減少によって1.0-4.0%減、24年は1.5-2.5%増と予想、前回会合時の予想を据え置いた。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「金融政策決定は、物価目標に対するインフレとインフレ期待、ロシア経済の変革の動向、さらには国内外の状況や金融市場の反応によってもたらされるリスクを考慮する」とした。その上で、「短期的には、インフレの上振れと下振れの両リスクはバランスが取れている」としており、市場では来年1-3月期まで金利据え置きを継続する可能性があるとみている。

 中期経済予測によると、政策金利の見通しは、22年が10.6%、23年は6.5-8.5%、24年は6.0-7.0%、25年は5.0-6.0%と、予想されている。

 ただ、中銀は、前回会合時に使った、「経済とインフレの動きは財政政策の決定に大きく依存している。財政赤字が拡大した場合、インフレを24年に物価目標(4.0%上昇)に戻し、それを4.0%上昇近くに保つためには、金融引き締めが必要になる可能性がある」との文言を残しており、インフレリスクを慎重に見極めたい考え。

 次回の定例会合は11月8日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 RTS連動<1324.T>、WTI原油<1671.T>、ガス<1689.T>、

 原油<1690.T>、野村原油<1699.T>

提供:モーニングスター社

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