【為替本日の注目点】12月ADP予想を大きく上回る
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
ドル円は続伸。「ADP雇用者数」など、経済指標が予想を超え、FRBによる利上げ継続観測がドルを支えた。ドル円は134円台まで買われ、134円05銭を記録。ユーロドルは水準を切り下げたものの1.0515前後で下げ止まる。株式市場は3指数が揃って反落。利上げ継続懸念が重荷となり、ダウは339ドル下げる。債券も売られ、長期金利は3.71%台まで上昇。金は反落。原油は大きく売られた反動から買い戻しが優勢に。
マーケット情報
12月ADP雇用者数 → 23.5万人
11月貿易収支 → -61.5b
新規失業保険申請件数 → 20.4万件
12月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 44.7
12月S&PグローバルコンポジットPMI(改定値) → 45.0
ドル/円 132.74 ~ 134.05
ユーロ/ドル 1.0515 ~ 1.0608
ユーロ/円 140.12 ~ 141.37
NYダウ -339.69 → 32,930.08ドル
GOLD -18.40 → 1,840.60ドル
WTI +0.83 → 73.67ドル
米10年国債 +0.035 → 3.718%
本日の注目イベント
独 11月製造業新規受注
独 11月小売売上高
欧 ユーロ圏12月消費者信頼感(確定値)
欧 ユーロ圏12月景況感指数
欧 ユーロ圏11月小売売上高
欧 ユーロ圏12月消費者物価指数(速報値)
米 12月雇用統計
米 11月製造業受注
米 12月ISM非製造業景況指数
米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
米 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁講演
米 クック・FRB理事、パネル討論に参加
米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、パネル討論に参加(ECBのレーン氏も参加)
加 12月就業者数
加 12月失業率
「良いニュースは、悪いニュース」の流れは続いているようです。昨発表された12月の「ADP雇用者数」は市場予想の「15万人増」を大きく上回る「23.5万人増」でした。また11月分についても速報値の「12.7万人」から「18.2万人」に上方修正されました。雇用の伸びは従業員500人以下の中小企業で大きく伸び、500人以上の大企業では減少しています。また、業種別では娯楽、ホスピタリティなどの分野での増加が目立っています。ADPのチーフエコノミストは、「労働市場は力強いが、むらがある。人材採用の状況は業界と事業体の規模によって明確に異なっている」と説明しています。「ADP雇用者数」は公務員を除く雇用者の統計で、個人が受け取る給与明細表(Pay Roll)の数を基本としており、今夜発表の「雇用統計」とは異なりますが、同指数の上振れは「雇用統計」の上振れ期待を押し上げる効果もありそうです。
さらに同時に発表された「失業保険申請件数」も20.4万件と、予想を下回り、昨年9月以来の低水準でした。両指数の改善により「米労働市場は引き続き堅調」であることが確認された形となり、FRBによる利上げスタンスが継続されるとの見方から、株価は大きく下げ、債券も売られ、金利上昇からドル円も昨年12月29日以来となる134円台乗せを示現しています。ドル円は年明け3日の欧州市場で129円51銭まで売られたわけですから、1週間ですでに4円50銭の値動きがあったことになります。筆者は今年前半はドル下落を見込んでいますが、これほど好材料が出ればドルの上昇もやむを得ないところでしょう。言えることは、今年前半の鍵である「労働市場」はまだ堅調だということです。ただ、前日発表されたISM製造業景況指数は2カ月連続で「50」を割り込んでおり、昨日発表されたPMIも「50」を大きく下回っています。大幅利上げの効果はじわじわと浸透しているとみています。ドルの上値は、余程のポジティブな材料が出ない限り限定的との予想を維持しています。
昨日はFOMCメンバーのタカ派的な発言もドル円の上昇に一役かったようです。アトランタ連銀のボスティック総裁は講演で、「物価圧力が緩和しつつある兆しなど、最近の報告を歓迎するが、やるべき仕事はまだ山積している。世界中の中央銀行当局者がこれに関して私と同意見であることは間違いないだろう」と話し、「インフレを2%に戻すため、政策手段の活用を引き続き決意している」と述べています。またカンザスシティー連銀のジョージ総裁もCNBCとのインタビューで、フェデラルファンド(FF)金利予測に言及し、「私は自分の予想を5%超に引き上げた」と述べ、「インフレが当局の2%に向って説得力ある形で鈍化し始めているという兆候が得られるまで、その水準に当面とどまると私はみている」と語っています。総裁は、24年になっても金利を5%超で維持することが適切になるのが予測かどうか問われると、「私にとってはそうだ」と答えています。(ブルームバーグ)さらにFOMCメンバーではないものの、IMFのギータ・ゴピナート筆頭副専務理事は、「労働市場の指標とサービス価格など非常に粘着性のあるインフレ項目を見ると、米インフレがまだヤマを越えていないのは明らかだと思う」と話し、「米金融当局はこのまま利上げを続けることだ」とし、米政策金利が5%となり、今年いっぱいその水準にとどまることに賛成との考えを、英FT紙で語っています。一方で、昨年春以降タカ派の先頭を走ってきたブラード・セントルイス連銀総裁はややトーンを下げています。ブラード総裁は、「政策金利は十分に景気抑制的と見なされ得る領域にはまだ入っていないが、それに近づきつつある」との認識を示しました。昨年来影響力を増しているブラード総裁ですが、この日も、この発言で株と債券が値を戻し、ドル円が下げる場面もありました。ブラード氏の予測には先見性があるだけに、個人的には同総裁の発言に非常に注目しています。
ウクライナ情勢も来月で1年にもなろうとしており、新しい局面に入りつつある気がします。欧米はこれまでミサイルなど対空兵器を中心に支援をしてきましたが、地上兵器の支援を拡充させる方針のようです。フランスのマクロン大統領は、同国製の軽戦車「AMX―10RC」をウクライナ軍に供与することを発表し、バイデン大統領も歩兵戦闘車「ブラッドリー」を提供する可能性があると述べています。ウクライナ国防省の情報総局長は、ウクライナ軍が春に大規模な攻撃を計画しており、3月に戦闘が「最も激化する」との見通しを示していると、ブルームバーグは伝えています。ウクライナとしても戦闘が開始されてから1年を前に、早期に決着を付けたいという思惑もあるようです。ちょうどこのタイミングでロシアのプーチン氏は、ロシア正教のクリスマスに合わせて「36時間」の一方的停戦を命じています。ウクライナ側は「自国の軍用車両や砲弾、兵員を再配置するための口実だ」とし、「停戦の条件としてロシア軍の撤退」を要求しています。
本日のドル円は132円50銭~134円50銭程度を予想しています。今夜22時半に発表される雇用統計では非農業部門雇用者数が「20.2万人」と予想されています。昨日のADPのように予想を大きく上回ると135円テストがあるかもしれませんが、ADPと雇用統計が足並みを揃えないことは良くあります。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
・今日のアナリストレポート
https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_academy01.htm
・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧
https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_calender.htm
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