【為替本日の注目点】ドル円再び乱高下
ひと目でわかる昨晩の動き
NY市場
日銀決定会合で金融政策の現状維持が決められたことで、ドル円は東京市場で131円57銭まで上昇。欧州市場にかけてはドル売りが優勢となり、NYでは朝方に129円台前半の高値を付け、その後ドルが急落。127円57銭までドル売りが進み、「往って来い」の展開に。ユーロドルはじり高が続き、NYでは1.0887を記録。昨年4月以来のユーロ高を示現。株式市場は3指数が揃って大きく下落。特にダウは613ドル下げ、前日の大幅安と合わせ2日間で1000ドルの下げに。債券価格は急騰。長期金利は3.37%台に急低下。金と原油は反落。
マーケット情報
12月小売売上高 → -1.1%
12月生産者物価指数 → -0.5%
12月鉱工業生産 → -0.7%
12月設備稼働率 → 78.8
1月NAHB住宅市場指数 → 35
ドル/円 127.57 ~ 129.13
ユーロ/ドル 1.0787 ~ 1.0887
ユーロ/円 138.82 ~ 139.84
NYダウ -613.89 → 33,296.96ドル
GOLD -2.90 → 1,907.00ドル
WTI -0.70 → 79.48ドル
米10年国債 -0.178 → 3.370%
本日の注目イベント
豪 豪12月雇用統計
日 12月貿易統計
トルコ トルコ中銀政策金利発表
欧 ユーロ圏11月経常収支
欧 ECB議事要旨(12月会合分)
欧 ラガルド・ECB総裁講演
米 新規失業保険申請件数
米 12月住宅着工件数
米 12月建設許可件数
米 1月フィラデルフィア連銀景況指数
米 コリンズ・ボストン連銀総裁講演
米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
米 ブレイナード・副議長講演
米 企業決算 → ネットフリックス、P&G
「オーマイガァ!!」まさにそう言いたくなるようなドル円の動きでした。
昨日の午前11時半過ぎ、日銀金融政策決定会合の結果が出るのを「固唾を飲んで」見守っていましたが、予想した通り、政策の修正はなく「現状維持」でした。市場では、3日連続で長期金利が上限である「0.5%」を超えたこともあり、「何らかの変更がある」との見方が強かっただけに、発表直後からドルの買い戻しが強まり、ドル円は急騰。結局、発表前の水準からちょうど3円程ドル高円安が進み、131円57銭前後まで上昇しました。さらに昨日のドル円の乱高下はそれで終わらず、今度はNYで経済指標の下振れが続き、また米景気そのものへの懸念も広がりドルを売る動きが活発となり、一時は127円57銭辺りまで押し戻される展開でした。「往って来いの展開」を絵に書いたような動きでしたが、米インフレが徐々に鈍化することを考えれば、NYでの動きが基本かなと思います。今週に入り先月の「黒田ショック」の影響もあり、ドル安へのバイアスが増していたことで、ドル円の動きも上下に大きく動きました。年が明けてからの動きは、6日の米雇用統計前には134円80銭近辺までドルが買われたと思いきや、今週月曜日には127円22銭までドルが急落し、そして昨日は131円58銭まで急騰した後、元の水準に押し戻されています。さながら、嵐に見舞われて大きく揺れ動く「大海」の中にいるようです。
金融政策決定会合では全員一致で「現状維持」を決めましたが、黒田総裁は記者会見の席で、「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要があるとは考えていない」と述べていました。日銀は同時に投機筋の「空売り」に対抗するために金融機関に国債の購入を促す異例の資金供給も決めています。国債の利回りよりも低利で資金を供給し、金融機関が国債を購入しやすいようにするものです。国債の売り圧力に対して日銀単独で対抗するのではなく、いわば「チームジャパン」を構築しようとする意図のようです。ただ、今後も日本のインフレ率上昇が止まらないようだと、いずれ国債の価格も下落する可能性が高く、購入した国債が含み損を抱えることにもなりかねません。果たしてどの程度の金融機関がこの「共通担保資金供給オペ」に賛同して投機筋に対抗するのか、注目していきたいと思います。
昨日も多くのFOMCメンバーによる発言がありましたが、概ね「タカ派」とまでは言えないものの、米国のインフレの鈍化には慎重な見方を維持しています。そのため、今後も利上げは継続していく方針を支持するとの認識でした。タカ派の代表格で、このところのインフレの鈍化傾向を受け、その姿勢にも変化が見て取れるセントルイス連銀のブラード総裁は、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「あと少しで景気抑制的と呼び得る領域に入る状況だが、まだそこには達してはいない」と指摘し、インフレ率が2%目標へと確実に低下することを考えており、「その点では、ためらいたくはない」と述べています。またダラス連銀のローガン総裁は、テキサス大学のイベントで、「ペース減速はまさに最善の決定を確実に行うための方法だ」とし、「われわれは利上げペースが減速したとしても金融状況を景気抑制的に保つため全体的な政策戦略を調整することができ、必要なら調整すべきだ」と述べており、現在の状況は、「今月末の会合では0.25ポイントへと利上げ幅を縮小することを正当化する」と語っています。同総裁は今年のFOMCでの投票権を持っています。フィラデルフィア連銀のハーカー総裁もデラウエア大学のイベントで、「今年は数回の利上げがあると私はみているが、75ベーシスポイント利上げの時期が過ぎたことは確かだろうと思う。私の見解では、今後は25bpの利上げ幅が適切になるだろう」と話しています。(ブルームバーグ)昨日のNYでは株が売られ、債券が買われ、長期金利は急低下し、これがドル売りの大きな要因になっていましたが、これらの発言は中立と受け止められたようです。
複数の経済指標が下振れしていたことを考慮すると、インフレ率の低下に伴ってFRBの利上げペースが緩和される可能性につるながることから、もう少しNY株は買われてもおかしくはなかったかと思いますが、経済指標の予想以上の悪化から米景気そのものへの懸念が株価を押し下げたようです。12月の小売売上高は「-1.1%」と、予想以上に悪化し1年ぶりの大幅減でした。11月分も下方修正され、この日発表された鉱工業生産など他の指標の下振れと相まって、景気懸念が広がったとみられます。
日米の中央銀行の政策決定や発言などで相場が大きく変動する展開が続いています。これまでは「基軸通貨ドルの番人」であるFRBの動きをウオッチすれば何とか凌げましたが、昨年12月からは日銀の動きにも注意深く目配りする必要があります。また、債券市場での長期金利の推移についても同様です。それだけに、相場の動きを予想するのが難しくなっています。長期のポジションを維持しにくい状況ですので、ここはある程度利益が出たら、一旦は手仕舞いすることも考えた方がよさそうです。
本日のドル円は127円~130円程度と予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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