ピークアウトするのか、世界のインフレ懸念? 外為オンライン・佐藤正和氏

為替

サーチナ

2023/1/30 12:40

 日本銀行が進めてきたYCC(イールド・カーブ・コントロール)の許容変動幅修正によって、為替市場は年末から年始にかけて大きく揺れ動いた。そしていま、4月に迎える黒田東彦日銀総裁の退任によって、市場は再びYCCの動向をめぐって神経質な為替変動を繰り返している。今後の為替市場がどんな動きをしていくのか、その予想が極めて難しい局面に差し掛かっている。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和さんに2月相場の見通しを伺った。

2月相場で最も注目すべきポイントは何になるのでしょうか?

 まずは1月31日-2月1日の日程で行われるFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策を決定する「FOMC(米連邦公開市場委員会)」になります。これまでずっと0.5%以上の利上げを決定してきたわけですが、今回の金利引き上げ幅は0.25%になると予想されています。

 FOMC終了後に行われるパウエルFRB議長の記者会見も重要なポイントです。次回の3月21日-22日のFOMCでも利上げスタンスは継続されるのか、それとも一部ハト派が予想するように利上げ休止になるのか。今後の利上げペースについて、どんな言及があるのか要注目です。

 また、最近よく指摘されている年内のリセッション(景気後退)懸念についても、FRBとしてどんな考えを持っているのか、注目しておく必要があります。先日発表された米国の10-12月期のGDP速報値では、前期比年率2.9%と市場予想を上回る伸びになりましたが、パウエル議長の発言内容によっては利上げペースに変化があるかもしれません。

当面、注目すべき統計にはどんなものがあるでしょうか?

 とりあえずは、2月3日の雇用統計がひとつのポイントになります。23年1月の非農業部門雇用者数の市場予想は18万3000人の増加、22年12月の実績は22万3000人の増加だったので、やや減少すると予想されています。また失業率も、12月の実績は3.5%、1月の市場予想では3.6%となっており、労働市場はやや落ち着くと予想されています。

 インフレの原因の一つとなっている人件費の高騰が落ち着けば、FRBの利上げペースは鈍化すると見られて、ドルは売られる展開になります。逆にサプライズで、雇用者数が急増したり、失業率に変化が現れると、インフレ懸念が再び強まりドルが買われる展開もあります。

 また、CPI(消費者物価指数)やFRBが最も重視するPCE(個人消費支出)デフレータにも注目しておくべきでしょう。米国のCPIは11月が前年同月比7.1%、12月は1年1か月ぶりに7%台を下回って6.5%になったわけですが、それでもFRBが目標とする2%にはまだほど遠く、利上げのペースは鈍化するものの、今回の会合以降も利上げは続くとみられています。

 次のFOMCは3月下旬になるため、それまでは雇用統計をはじめとして、CPIやPCEなどの動きなどによって相場が揺れ動く展開になると考えられます。ウクライナへの戦車供与を決めたドイツや米国に対して、ロシアがどんな対応をしてくるのかも、注目しておくべきです。

カナダの中央銀行が利上げを見合わせる決定をしましたが、その影響は?

 1月25日、カナダ中銀は政策金利を0.25%引上げて、政策金利を4.5%にすることを決めましたが、声明でこれまでの急速な金融引き締めの影響を見極めるために、今後の利上げを見合わせると決定しました。カナダ中銀は、昨年の利上げ開始に際しても、先進国の中でいち早く利上げを決めるなど、政策決定のスピードが早い印象があります。今回の声明文が正しければ、いずれFRBなども同様の判断を下してくる可能性があります。

 ただ、カナダ中銀の動きとは別に、ロシアにエネルギーを依存していたドイツが、暖冬の影響でエネルギー需要が低く抑えられ、22年10-12月期のGDPが予想外の横這いだったと報じられました。サプライズではありましたが、ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁は慎重な見方を崩さず、金利引き上げの可能性は高いと予想されています。

 英国のイングランド銀行やオーストラリア準備銀行も、利上げが予想されており、そういう意味では、全体的には利上げの方向性が今後も継続されると思った方がよさそうです。

1月は日本銀行の政策転換も予想されましたが……。

 1月17日-18日に行われた金融政策決定会合では、ひょっとしたらYCCの停止もあるのではないか、といった情報が飛び交い、10年もの国債の長期金利も上限の0.5%前後をつける場面がありました。結局、金融政策維持のスタンスに変化はありませんでしたが、日銀は金利上昇を全力で阻止しているという印象があります。12月の消費者物価指数は、前年同月比4.0%と40年ぶりの高い水準になっており、今後も金融緩和維持に対して、ヘッジファンドなどの攻撃は続くとみてよさそうです。

 黒田総裁にとっては、3月9日-10日に行われる次の金融政策決定会合が最後の会合になるわけですが、日銀の金融緩和政策の転換は新しい総裁の下で行われる、と予想する人が大勢です。ただ、現在噂されている後任候補も日銀のプロパーばかりで、思い切った政策転換の可能性は低いと予想されています。

 そういう意味では、2月も日銀と投資家の思惑が交差して、ボラティリティの大きな相場が続くと予想されます。2月の予想レンジは次の通りです。

●ドル円……1ドル=124円-133円

●ユーロ円……1ユーロ=135円-143円

●ユーロドル……1ユーロ=1.05ドル-1.11ドル 

●英国ポンド円……1ポンド=155円-164円 

●豪ドル円……1豪ドル=89円-92円

こういう状況では、どんなトレードをするのがいいのでしょうか?

 2月は、大きなイベントや材料は少ないのですが、やはり変動幅が大きく不安定な相場になることが予想されます。長期で持ち続けるポジションは考えにくく、やはり短期のポジションでこまめに売買を繰り返すことが大切と考えていいでしょう。

 昨年の10月や11月のような、放っておけば利益が出る、といった相場とは違うことを意識して、こまめなトレードを心がけましょう。

(文責:サーチナ)

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