【為替本日の注目点】米10-12月期雇用コスト指数低下
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
ドル円は雇用コスト指数の発表後に129円75銭まで売られたがその後反発。FOMCの結果を待つ雰囲気となり130円台前半で取引を終える。ユーロドルは1.08台半ばを中心にもみ合う。株式市場は3指数が大幅に反発。経済指標がFRBの大幅利上げの終焉を想起させる結果だったことが材料に。ダウは368ドル上げ、S&P500も58ポイントの上昇。債券も買われ、長期金利は3.50%台に低下。金と原油は揃って反発。
マーケット情報
10-12月雇用コスト指数 → 1.0%
11月ケース・シラー住宅価格指数 → 6.77%
1月シカゴ購買部協会景気指数 → 44.3
11月FHFA住宅価格指数 → -0.1%
1月コンファレンスボード消費者信頼感指数 → 107.1
ドル/円 129.75 ~ 130.41
ユーロ/ドル 1.0825 ~ 1.0875
ユーロ/円 140.78 ~ 141.54
NYダウ +368.95 → 34,086.04ドル
GOLD +6.10 → 1,945.30ドル
WTI +0.97 → 78.87ドル
米10年国債 -0.030 → 3.507%
本日の注目イベント
中 1月財新製造業PMI
欧 ユーロ圏1月消費者物価指数(速報値)
欧 ユーロ圏1月失業率
欧 ユーロ圏1月製造業PMI(改定値)
米 1月S&Pグローバル製造業PMI(改定値)
米 1月消費者物価指数
米 1月ADP雇用者数
米 1月ISM製造業景況指数
米 1月自動車販売台数
米 FOMC 政策金利発表
米 パウエル議長記者会見
米 米下院議長、債務上限問題でバイデン大統領と会談
米第4四半期の雇用コスト指数が前期比「1.0%」と、市場予想の「1.1%」を下回ったことで、新たなインフレ鈍化の兆候が示されたとの観測が広がり、株式と債券が買われ、ドル円は129円75銭まで売られましたが、明日朝方のFOMCを控え、動きはそれほど活発なものではありませんでした。雇用コスト指数の鈍化は確かにFRBにとっては「朗報」でありますが、ただそれでも、インフレ圧力が完全に鎮静化したとFRBが確信するにはまだ不十分で、今後も同様なデータが望まれます。ブルームバーグのエコノミストは、「第4四半期の雇用コスト指数の伸びの鈍化は、コアサービス分野でのディスインフレ進行を示唆する。賃金の伸び減速により、金融当局は利上げペースを落とすべきとの確信を強めそうだ。だが、最低5%を引き上げることは止めないだろう」と、今後もターミナルレートを5%以上に引き上げるとの見方を維持しています。一方で人手不足が続く米国の多くの経営者が、高賃金を提示しなければ労働力が確保できず、その部分のコストを価格に転嫁するといった「悪循環」を断ち切る過程にいるのか、今後のデータを注意深く見る必要があります。
この日発表された経済指標はいずれも景気抑制策の効果が出ている印象です。1月の消費者マインドは「107.1」と、依然として分かれ目の「100」を超えてはいますが、市場予想の「109」を下回っていました。また、今後6カ月の見通しを反映する「期待指数」も前月の「83.4」から低下し、「77.8」でした。政策金利の大幅引き上げの影響をいち早く受けた住宅市場でも、この日発表された11月のケース・シラー住宅価格指数は、全米ベースで「0.3%」低下し、主要20都市では「0.5%」の低下でした。(いずれも前月比)米国の住宅価格は2022年には大幅に上昇しており、今回発表された指数でも1年前と比較すれば依然として高水準にありますが、上昇の勢いは確実に鈍化しています。前月比ベースでは5カ月連続の低下で、昨年6月に付けたピークからは「2.5%」低下したと報告されています。
昨日のコメントでも触れましたが、「ブラックスワン・ファンド」を運営するヘッジファンド、ユニバース・インベストメンツに所属するタレブ氏は引き続き市場の楽観に警告を発し、「ディズニーランドは終わり、子供は学校に戻る」と発言しています。同氏は、「超低金利時代が巨額な資産バブルをつくり出し、金融当局が以前のような水準に金利を引き上げる一方で、投資家は高金利の世界に戻る用意がほとんど整っていない。仮想通貨は低金利時代が続いた市場の甘さを表している。この数年、資産は恐ろしく膨張した。腫瘍のようにだ。この表現が最も適していると思う」と述べていました。相場が下落すれば大きな利益を生むファンドを運営しているため、「ポジショントーク」とも取れないことはありませんが、今後も順調にインフレ率が低下して行くのかどうかについては、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏も、「市場が先走り過ぎているのではないかとやや不安になる。市場はインフレが終わったかのような価格設定になっているが、これは自ら実現を阻む予言かもしれない」とブルームバーグの番組で指摘しています。
複数の経済データの下振れを受け、市場は早くもハト派観測に傾いています。今夜のFOMCでの0.25ポイント引き上げは相当だとしても、3月の会合では最後の利上げを行い、その後は見送るとの見方も浮上しています。個人的には5月会合ではその可能性があるかもしれないものの、その後の会合でも政策金利の維持が続くとは予想しません。IMFが昨日発表した「世界経済見通し」では、今年度の成長率を上方修正しました。その根拠として、「戦争の激化や中国の需要回復でインフレ圧力が再燃するリスク」を挙げています。筆者も米国のインフレがこのまま順調に低下し続けるとは予想していません。
明日の朝方4時にはFOMCの結果発表があり、30分後にパウエル議長の記者会見があります。繰り返しになりますが、ここで今後の金融政策に関するどのようなヒントを与えてくれるのかがカギになります。本日のドル円は128円50銭~131円50銭程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
・今日のアナリストレポート
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・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧
https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_calender.htm
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