<新興国eye>2023年第1四半期、カンボジアからの輸出減少

新興国

2023/5/12 8:54

 カンボジア経済財政省の関税消費税総局の発表によりますと、2023年第1四半期(1月~3月)のカンボジアからの輸出は、対前年比5.7%減の53億9201万ドル(約7280億円)に留まったとのことです。輸入は、21.3%減の58億6013万ドル(約7910億円)でした。

 輸出先を国別にみると、1位は米国で対前年同期比15.2%減の18億2305万ドルで、全体の33.8%を占めています。2位はベトナムで19.9%増の9億980万ドル(シェア16.9%)、3位タイ5.0%増3億3416万ドル(同6.2%)、4位中国2.1%増3億2865万ドル(同6.1%)、5位日本0.9%増3億839万ドル(同5.7%)となっています。輸入は、第1位は中国で対前年同期比0.7%減の25億3377万ドル(同43.2%)、2位ベトナム0.6%減9億5761万ドル(同16.3%)、3位タイ15.3%減7億2596万ドル(同12.4%)、4位インドネシア42.2%増2億9265万ドル(同5.0%)、5位台湾27.1%減1億9410万ドル(同3.3%)となっています。

 品目別輸出では、縫製品が第1位で対前年同期比22.6%減の16億5463万ドル(シェア30.7%)、2位電気部品101.7%増7億3677万ドル(同13.7%)、3位穀物33.1%増5億3810万ドル(同10.0%)、4位旅行用品22.3%減3億8520万ドル(同7.1%)等となっています。品目別輸入は、1位石油製品7.8%増8億7003万ドル(同14.8%)、2位縫製原料24.0%減5億9190万ドル(同10.1%)、3位車輛18.0%減4億3467万ドル(同7.4%)、4位機械8.5%増3億6830万ドル(同6.3%)等です。品目別輸出で、日系企業等が製造・輸出している電気部品が大きく伸びたことが注目されます。

 他方、カンボジアの主力輸出品である縫製品、履物、旅行用品が軒並み2割以上の減少となっており、今後が懸念されます。品目別輸入では、石油製品の輸入金額が引き続き増加しています。他方、縫製品の受注が減少したため縫製原料の輸入も減少しています。

 カンボジアの輸出産業は、新型コロナの影響から予想よりも早く回復してきました。しかし、主要輸出先の米国・欧州の景気減速等の影響で、今年は逆風を受けることが懸念されています。中国への輸出、中国からの輸入は、おおむね横ばいであり、2022年1月に発効した中国との自由貿易協定の効果は、現状ではカンボジア側には大きくなかったものと見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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