<新興国eye>インドネシア中銀、予想通り金利据え置き―通貨ルピア安阻止へ(1)

新興国

2023/5/26 8:51

 インドネシア中央銀行(BI)は25日の理事会で、米デフォルト(債務不履行)危機によるインドネシア経済や通貨ルピアへの悪影響を抑制、ルピア相場を支えるため、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を5.75%に据え置くことを決めた。

また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.00%、翌日物貸出ファシリティー金利も6.50%と、いずれも据え置いた。

 金利据え置きは市場の予想通りだった。市場では国内景気が堅調を維持、インフレが低下傾向にあるものの、欧米の金融不安(銀行危機や米デフォルト危機など)の悪影響が経済、特に通貨ルピアに及ぶことを懸念、中銀は現状維持を決めると予想していた。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で3年9カ月ぶりに利上げに転換、23年1月会合まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、これまでの利上げ効果を見るため、2月会合で22年7月以来7カ月ぶり金利を据え置いた。これで金利据え置きは4会合連続となる。金利水準は依然、19年以来4年ぶりの高水準となっている

 中銀は会合後に発表した声明文で、前回4月会合時と同様、「政策金利を5.75%に維持することは23年のコアインフレ率が物価目標の前年比2-4%上昇のレンジ内に留まり、インフレ率(全体指数)が早期に物価目標に戻すという金融政策スタンスと一致する」とし、引き続き、これまでの利上げが経済やインフレに及ぼす効果を見たい考えを改めて強調した。

 しかし、中銀のペリー・ワルジョ総裁は会合後の会見で、今回の会合では最近のルピア相場の下落阻止に焦点を当てたことを明らかにした。中銀は声明文で、「4-6月期のルピア相場(対ドル)は上昇傾向にあり、外国資本の流入により、年初来でもルピア相場は4.48%上昇した」とし、「力強い経済成長の見通しと、低インフレ、国内金融資産の魅力的な利回りに伴う経常黒字と海外資本の流入に支えられ、ルピアの上昇が続くと予想している」としたが、最近では米デフォルト危機や輸出悪化を受け、5月だけでルピアは約1.5ポイント下落、下押し圧力が強まっているのが実情。

 市場では今後も輸出減少と経常黒字の縮小により、ルピアには下押し圧力が高まると懸念している。このため、中銀は当分の間、ルピア相場の下落圧力となる景気刺激の利下げは困難となり、また、インフレ率が物価目標に収束するまで、現状維持を続けると見ている。ただ、景気が鈍化する可能性が強いため、ルピア相場が安定すれば、中銀は23年の成長率目標(4.5-5.3%増)を達成するため、9月までに利下げを検討するとの見方もある。(2)へつづく

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