<新興国eye>トルコ中銀、政策金利を3会合連続で据え置き―通貨リラ安阻止狙い

新興国

2023/5/30 8:52

 トルコ中央銀行は25日の金融政策決定会合で、主要政策金利である1週間物レポ金利を8.5%に据え置いた。市場の予想通りだった。

 中銀は2月6日の大震災を受け、震災復興を支援するため、2月会合で22年11月以来3会合ぶりに利下げに踏み切ったが、3月会合で現状維持に転換した。これで金利据え置きは3会合連続となる。ただ、現行の8.5%の金利水準は3年ぶりの低水準となっている。

 中銀は震災復興のためにも中銀は金融緩和を進めたいところだが、今回の会合前、大統領選挙(14日)が実施され、エルドアン大統領と他の2候補との3つ巴戦となり、決戦投票(28日)が決まったため、市場では中銀はリラ安(対ドルで年初来6%下落)が急速に進んでいるため、リラ安をさらに助長する追加利下げを差し控えたと見ている。また、市場では金融緩和を信奉するエルドアン大統領が決選投票を制したものの、リラ安の下落傾向は長期化すると予想しており、中銀は金利据え置きの長期化と、リラ買い・ドル売りの市場介入を強めざるを得ないと見ている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、金利を据え置いた理由について、前回4月会合時と同様、「(2月の)大地震は短期的には経済活動に影響を与えるが、中期的にはトルコ経済に恒久的な影響を与えることはない。大地震の被害を受けた地域は予想よりも早く回復している」とした上で、「現在の金融政策のスタンスは、物価の安定と金融の安定を維持することにより、震災からの回復を支えるのに十分と判断した」としている。また、中銀は、「震災後の鉱工業生産の成長モメンタムと雇用の前向きな傾向を維持するために、金融環境を下支えし続けることが一層重要になっている」とも指摘している。政府は5万人超の死者を出した大地震被害による経済損失額を約1040億ドルと推定している。

 また、中銀は金利を据え置いたもう1つの理由として、「国内消費需要の増加が続いており、エネルギー価格の高水準と主要貿易相手国の経済活動の低迷により、経常収支へのリスクは依然として存在する。持続可能な経常収支は物価の安定にとって重要だ」とし、インフレとリラ相場の安定を脅かすリスクが高まっていることも挙げている。

 今後の金融政策については、中銀は前回会合時と同様、「経済指標がインフレの恒久的な低下(減速)を示し、中期的な5%上昇の物価目標が達成されるまで、(通貨トルコリラの急落を阻止する)リラリゼーション戦略に基づいて、利用可能なあらゆる金融政策ツールを断固として使い続ける」としている。リラリゼーション戦略とは金融システムでのトルコリラの利用拡大により、インフレ加速要因となるトルコリラ安を阻止し、物価安定を目指すという戦略。

 次回の金融政策決定会合は6月22日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 上場MSエマ<1681.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ