【為替本日の注目点】米1年先のインフレ期待低下
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
欧州市場では139円05銭付近まで下げたドル円はNYでは反発。米金利が上昇したことで139円76銭まで買われたが、その後再び反落。ユーロドルも引き続き1.07台で推移し、値幅も限定的。株式市場は3指数が揃って3日続伸。ナスダックとS&P500は昨年4月以来となる高値を付ける。債券はほぼ変わらず。長期金利は小幅に低下。金は続落。原油価格は米景気の減速見通しやゴールドマンの予測もあり、3ドルを超える大幅安。
マーケット情報
5月財政収支 → -240.3b
ドル/円 139.10 ~ 139.76
ユーロ/ドル 1.0744 ~ 1.0771
ユーロ/円 149.76 ~ 150.25
NYダウ +189.55 → 34,066.33ドル
GOLD -7.50 → 1,969.70ドル
WTI -3.05 → 67.12ドル
米10年国債 -0.004 → 3.736%
本日の注目イベント
豪 豪6月ウエストパック消費者信頼感指数
豪 豪5月NAB企業景況感指数
独 独5月消費者物価指数(改定値)
独 独6月ZEW景況感指数
英 英ILO失業率(2-4月)
英 英5月失業率
英 ベイリー・BOE総裁、上院委員会で証言
米 5月消費者物価指数
米 イエレン財務長官、下院金融委員会で証言
今夜は注目の「米5月の消費者物価指数(CPI)」が発表されます。発表を控え市場は動きにくい中、昨日は東京市場の後半から欧州市場にかけてはドルが売られ、ドル円は139円05銭近辺まで下げましたが、NYでは一転して買われ、139円76銭を付けています。もっとも、その後は再び下落基調となり、139円台前半までドル安が進んでいます。
CPIの市場予想は昨日も述べましたが、総合で「4.1%」、コアで「5.2%」(いずれも前年同月比)で、先月よりも伸びが鈍化していると見られています。そして、翌日に発表されるFOMCの金融政策についても、ここに来てほぼ「利上げ見送り」で固まってきたようです。もちろん、CPIが大幅に上昇していれば、利上げ継続の可能性は残っていますが、そうなれば結構な「サプライズ」ということになります。予想通り利上げが見送られると、11会合ぶりの利上げ休止となり、市場はその先の7月会合の動向に目を向けることになります。昨日も述べたように、会見ではパウエル議長が「タカ派寄り」のメッセージを発信し、市場の楽観論をけん制するのではないかと予想しています。インフレとの闘いは、鈍化スピードは別として、これまではある程度順調に機能してきたと言えると思いますが、まだ道半ばです。FRBは、目標である2%の物価上昇が持続的かつ安定的と判断できるまでは、決して手綱を緩めることはないと思われます。
その闘いにも追い風が吹いています。NY連銀が調査した米消費者のインフレ期待が低下しています。NY連銀が12日発表した「消費者期待調査」によると、1年先のインフレ期待は「4.1%」と、先月から0.3ポイント下げ、2021年5月以来の低水準となりました。ただ、3年先のインフレ期待は「3%」、5年先は「2.7%」と、共に0.1ポイント上昇しています。
NY株式市場では主要3指数が揃って3日続伸しました。ダウは5日続伸で3万4000ドルの大台を回復し、先行して上昇しているナスダックとS&P500は、昨年4月以来の高値を付けています。一方米長期金利は、先週は上昇基調を強めていたものの、昨年10月に記録した4.24%からはかなり低い水準(価格は上昇)で推移しています。つまり、株も債券も買われていることになります。今朝のブルームバーグの記事に「どの市場が間違っているかが問題」といった見出しを冠した記事があります。
株は「リスク資産」、債券は「安全資産」の代表であり、それぞれ買われる時の市場環境が基本的には存在します。2019年から2020年にかけて株と債券が揃って買われた、いわゆる「ゴルディロックス相場」がありましたが、その後新型コロナウイルスのパンデミックで崩壊し、長くは続きませんでした。ドル円は基本的には債券の利回りに引っ張られる傾向がありますが、それでも株価が大きく下げれば、「リスク回避の円買い」といった言葉も飛び交います。債券と株式の価格にこの先調整が起これば、ドル円にも影響があることから、注意が必要です。ブルームバーグは、「株式と債券の乖離が広がっている現在の状況に基づくと、インフレのボラティリティーに関する債券市場の価格設定が正しいとすれば、株式には20%の下落余地があることが示唆される」というJPモルガンのモデルを紹介しています。今後の見立てについては専門家の間でも意見が分かれているのが現実で、これが市場のボラティリティーを高めることにもなっています
本日のドル円は138~140円50銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
・今日のアナリストレポート
https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_academy01.htm
・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧
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