<新興国eye>トルコ7-9月期GDP、予想上回る前年比5.9%増―前期比は0.3%増に急減速

新興国

2023/12/8 8:47

 トルコ統計局が前週(11月30日)発表した7-9月期GDP(国内総生産)伸び率(季節調整後、09年=100として)は前年比5.9%増と、前期(4-6月期)の3.9%増(改定前は3.8%増)から伸びが加速、市場予想(5.19-5.6%増)や22年全体の5.5%増も上回った。主に企業投資の急増が要因。個人消費も伸びは鈍化したが、全体を下支えした。

 ただ、前期比は0.3%増と、前期の3.3%増(改定前は3.5%増)から伸びが急減速、市場予想(1.0%増)も下回り、1-3月期(0.3%減)以来の低い伸びとなった。個人消費の伸び鈍化や、欧州の景気後退による輸出回復の遅れが要因。

 市場では5月の大統領選後、トルコ中銀がインフレ抑制のため、これまでの金融緩和から急速な金融引き締め(利上げ)に転換したことが個人消費に影響したと見ている。また、24年2月29日に発表予定の10-12月期GDPも中銀のインフレ抑制のための利上げ継続により、前期比の伸びは緩やかに減速すると予想している。

 メフメト・シムセク財務相は統計発表後、7-9月期GDPの結果について、「今年上期と比べ、内需の成長への寄与度は低下したが、純輸出のマイナスの寄与度は低下した」とした上で、「トルコ経済は内需と外需のバランスが取れた成長に向かって進んでいる」と、景気の先行きを楽観的に見ている。

 主な内訳はGDPの約62%を占める家計最終消費支出(個人消費)が前年比11.2%増と、前期の同15.4%増から伸びが2期連続で減速した。ただ、13期連続のプラスとなり、全体の伸びを支えた。また、前期比も5.5%減と、急減速、前期の同1.7%減に続き、2期連続でマイナスとなった。

 GDP押し上げ要因の輸出は前年比1.1%増と、前期の9.4%減から回復、4期ぶりにプラスとなった。一方、GDP押し下げ要因の輸入は同14.5%増と、8期連続で増加したが、前期の同19.8%増から伸びが鈍化した。しかし、それでも輸出の伸びが輸入を大きく下回ったため、外需全体としてGDPの押し下げに寄与している。

 総固定資本形成(企業投資)は同14.7%増と、4期連続の増加となり、前期の同5.6%増から伸びが急加速、成長率寄与度も3.4%ポイントとなり、全体を押し上げた。政府最終消費支出は同5.3%増と、前期の同6.1%増を下回り、3期連続で伸びが鈍化した。

 他方、生産面で見たGDP伸び率(前年比)の主な内訳は、建設業が8.1%増(前期は6.6%増)と、最も高い伸びとなり、GDP伸び率(5.9%増)を上回った。次いで鉱工業が5.7%増(同2.7%減)、このうち、製造業は同6.2%増(同1.9%減)となっている。

 このほか、金融・保険業は5.1%増(同7%増)、サービス業(卸売業、小売業、輸送、保管、宿泊施設、食品サービス活動)は4.3%増(同6.8%増)、公共行政・教育・医療・社会福祉は3.6%増(同5.1%増)、不動産業は2.7%増(同3.2%増)、その他サービス業は2.2%増(同6.6%増)、情報・通信業は1.7%増(同1.6%増)、農林水産業は0.3%増(同0.2%増)。

 対照的に、行政支援などの専門職サービスは2.5%減(同1.1%減)と、最も低い伸びとなった。

 最新のOECD(経済協力開発機構)の予測(11月29日発表)によると、トルコ経済の23年の成長率見通しは4.5%増と、従来予想の4.3%増から上方修正された。24年は2.9%増、25年は輸出が回復し、3.2%増を予想している。

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