<新興国eye>カンボジアの電力事情2023―電力需要の増大続く

新興国

2024/1/19 9:38

 カンボジア電力庁(EAC)は、2023年年次報告書「カンボジア電力開発の概要」を発表しています。

 2023年末の設備容量は、2022年末の3464MWから14.8%増の3977MWに増加しました。年間電力供給量(近隣国からの輸入電力含む)は、2022年の1万4960GWhから、2023年は12.0%増加して1万6751GWhに達しました。2020年-2021年は新型コロナの影響で伸び率が落ち着きましたが、2022年-2023年には再び需要が急増しています。15年前の2009年と比較すると、2023年の設備容量は約8倍に、電力供給量も約8倍に急増しています。2024年の電力供給量の予測は、前年比12.6%増の1万8857GWhに達する見込みです。

 2023年の電力供給の内訳は、国内での発電量が94.3%、ベトナム、タイ、ラオスからの輸入電力が5.7%となっています。国内の内訳は、石炭火力48.1%、水力46.1%、太陽光発電5.1%、バイオマス0.4%、石油火力0.3%となっています。輸入電力の比率が一時は60%にも達していましたが、国内での発電所整備が進み、輸入電力の比率は大幅に低下しました。

 送電線も整備が進み、115KV・230KV・500KVの基幹送電線は総延長3709kmに達しています。建設中・計画中(2028年まで)の送電線は、1324kmとなっており、地方電化の促進と電力供給の安定化・効率化が期待されます。

 全国送電網と接続している村落数は、1万4008村で、全体の98.9%となっています。世帯ベースでは、368万世帯中346万世帯が電化されており、電化率は94.0%(2022年89.9%)となっています。

 2019年の計画停電に懲りて、カンボジアでは発電所建設が進められ、送電網の整備も進められています。2020年-2021年は、新型コロナの影響で需要の伸びが抑制されて、電力需給は一息つくことができましたが、2022年-2023年には再び需要が急増しています。発電所の完成までには数年を要することもあり、引き続き発電所・送電線等の拡充努力を地道に続けていくことが必要と見られます。また、カンボジア政府も脱炭素を目指して石炭火力発電所の新規開発は行わない方針を決定しており、太陽光発電等の持続可能型エネルギーの活用を図る必要があるものと見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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