<新興国eye>マレーシア中銀、予想通り金利据え置き―景気支援優先もインフレリスクを警戒

新興国

2024/1/25 8:55

 バンク・ネガラ・マレーシア(中銀)は24日の金融政策決定会合で、景気を支援するため、政策金利である翌日物政策金利(OPR)を3.00%に据え置いた。市場の予想通りだった。

 中銀は23年1月会合で22年3月以来、5会合(10カ月)ぶりに据え置きに転換。3月も2会合連続で据え置いたが、5月会合で予想に反し、追加利上げ(0.25ポイント)を実施、金利水準をコロナ禍前の19年11月(3.00%)以来の水準に戻している。今回の据え置き決定は23年11月の前回会合に続き、4会合連続。

 中銀は会合後に発表した声明文で、据え置きを決めたことについて、前回会合時と同様、「中銀の金融政策スタンスは現在の金利水準で、引き続き景気を支援している」とした上で、「物価安定の下で持続可能な経済成長を維持し続ける」とし、景気下振れリスクに配慮し、景気を優先したことを強調している。

 市場では最近のインフレ率が23年12月は前年比1.5%上昇と、足元のピークだった22年8月の同4.7%上昇から大幅に低下していることが中銀に金利据え置きの余地を与えたと見ている。

 中銀はインフレ見通しについて、「23年の全体指数とコア指数はそれぞれ前年比2.5%上昇、同3.0%上昇と、いずれも予測の範囲内であり、24年のインフレ率は安定したコストと需要を反映、引き続き緩やかな伸びとなる」とし、前回会合時と同様、インフレ低下が続くと予想している。

 ただ、インフレ見通しに対するリスクについて、中銀は、「24年に価格規制と補助金を見直すという政府の方針がインフレと需要の見通しに影響を与える」とし、インフレ上振れリスクに懸念を示している。市場では今年後半からの推定810億リンギ(170億ドル)の燃料・電力補助金の廃止や、3月からの増税(サービス税の2%ポイント引き上げ)がインフレ上振れリスクになると見ている。

 通貨リンギットについて、中銀は、「最近のリンギットの動きは主に外部要因によって動かされており、国内経済の動向や見通しを反映したものではない。世界の金融・外為市場のボラティリティが高まるリスクが依然としてある」とし、リンギット安懸念を示した。その上で、中銀はリンギット安を阻止するため、前回会合時と同様、「外為市場への流動性の供給などにより、相場変動リスクを抑える」とし、リンギット安の阻止は利上げに頼らない方針。

 また、中銀は景気の見通しについて、「第4四半期(23年10-12月期)のGDPは速報値の結果を受け、23年全体の成長率が予測通りとなる見通しが確認できた」とした上で、「今後、輸出の回復と国内消費支出の底堅さに支えられ、24年の成長率は改善すると予想される」とした。しかし、中銀は成長見通しに対するリスクについて、「世界の成長見通しは主に地政学的緊張の激化や、予想を上回るインフレ率、世界金融市場のボラティリティの高まりなどの景気下振れリスクに依然としてさらされている」とし、警戒感を緩めていない。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「今後の経済やインフレなどの状況の進展を警戒している」とし、今後の金融政策は会合ごとのデータに基づき、予断を持たずオープンなスタンスを維持したい考え。

 次回の会合は3月6-7日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ブルサKLC<1560.T>、アセアン50<2043.T>、アジア債券<1349.T>、

 上場EM債<1566.T>

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