<新興国eye>カンボジア上院選挙結果―予想通りの与党人民党の大勝

新興国

2024/3/1 8:43

 2月25日、カンボジアの国家選挙委員会は、同日に投開票した上院議会議員選挙について、与党のカンボジア人民党の得票率が85.9%だったとする集計速報を発表しました。フン・マネット首相は、SNSで全58議席のうち「55議席を獲得した」と勝利宣言しました。

 野党ではクメール意思党が11.9%と人民党に次いで多くの票を集めました。国民の力党やフンシンペック党はいずれも2%以下にとどまった模様です。このため、人民党以外では、クメール意思党が数議席を獲得する見込みです。有力野党のキャンドルライト党は、昨年の国民議会(下院)選挙と同様に参加できませんでした。

 上院議員選挙は、58議席を対象に、6年に1度実施されます。下院に当たる国民議会議員(定員125人)と地方議員に当たるコミューン評議会議員(1万1622人)が投票する間接選挙です。なお、最終結果は、3月4-6日に発表される見込みです。

 人民党党首のフン・セン前首相も当選したとみられます。前首相は選挙後に上院議長となる意思を示しており、息子のフン・マネット首相と共に、事実上の一族支配を一層強固にするものと見られます。2月21日にはフン・マネット首相の弟フン・マニー人事大臣も副首相に昇格しています。

 上院選挙は、間接選挙ということもあり、人民党の圧勝は予想通りと言えます。当面、対抗勢力となる野党は存在せず、フン・セン前首相、フン・マネット首相は、人民党内の掌握強化と、中国や米国との外交戦に集中し、国内政治的には安定が続くものと見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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