<新興国eye>ブラジル中銀、5対4の賛成多数で0.25ポイント利下げ―次回も同率利下げを示唆

新興国

2024/5/9 8:53

 ブラジル中央銀行は8日の金融政策決定委員会で、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を0.25ポイント引き下げ、10.50%とすることを5対4の僅差で決めた。4委員は前回3月会合時と同じ0.50ポイントの利下げを主張、反対票を投じた。委員の意見が割れたのは23年8月会合以来。

 0.25ポイントの小幅利下げは市場の大方の予想通りだったが、一部では0.5ポイントの利下げを予想していた。

 中銀は8月会合で20年8月以来3年ぶりに利下げに転換。これで利下げは7会合連続、利下げ幅も計3.25ポイントに達した。今回の会合から中銀は0.25ポイントの小幅引き下げに転換、22年1月(9.30%)以来の低水準となったものの、依然、高水準に変わりはなく、インフレ抑制が期待される金融引き締め状況となっている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、利下げペースを遅らせたことについて、前回会合時と同様、「米国の金融緩和(利下げ)サイクルの開始を始め、多くの国での持続的なディスインフレのプロセス(インフレの低下基調)についても不確実性が高まっている」としたが、「新興市場国にとって引き続き警戒が必要な環境であると判断している」とし、利下げに対し慎重な姿勢に転換したとしている。

 こうしたフォワードガイダンス(金融政策の指針)の変更については、すでに、カンポス・ネト総裁は先月の投資家向け講演会で、「中銀はもはや(0.50ポイントの)利下げペースを維持することができず、小幅利下げを含め、4つのシナリオを検討している」と述べている。また、その際、総裁は小幅利下げの必要性について、FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ低下が遅れていることを受け、早期利下げに慎重な姿勢を強めており、世界的にも金利高が長期化するリスクが高まっているため、ブラジル中銀だけが利下げペースを従来通りのペースで進めることへの警戒感を指摘している。

 前回3月会合では、中銀は、「経済活動は(今後数四半期にわたり)減速するという中銀予測と引き続き一致している」と述べ、減速傾向にある景気の先行きに懸念を示し、利下げによる景気支援の必要性を強調していたが、今回の会合では、「経済活動と雇用市場に関する一連の経済指標は中銀の予想以上に強くなっている」とし、その上で、「最近のインフレ率(全体指数)は依然として、予想通りディスインフレ(物価上昇率の低下)傾向にある」としたものの、「最近のコア指数は物価目標を上回っている」とし、ディスインフレのプロセスが低迷するリスクが高まっていると警戒感を強めている。

 中銀はインフレ見通しについては、「24年のインフレ率は3.8%上昇(前回会合時は3.5%上昇)、25年は3.3%上昇(同3.2%上昇)と予想している」とし、いずれも前回会合時から予想を引き上げた。いずれも物価目標(3%上昇)を超えると予想している。

 また、中銀は今後の金融政策について、「インフレリスクは上ブレと下ブレの両方があるが、国内外の情勢はますます不確実となっており、金融政策運営には一層の注意が必要と判断している」とし、その上で、「ディスインフレのプロセスとインフレ期待のアンカー(定着)の両方が定着するまで、金融政策は縮小的な政策を継続すべきだ」とし、今後も小幅利下げの必要性を強調している。前回会合時、中銀は、「現在の局面は不確実性が高く、金融政策運営には慎重さが必要になっている」としたが、今回の声明文ではこの文言に加え、新たに「金融政策運営には一層の注意(greater caution)」との文言を追加している。

 市場では次回6月会合でも0.25ポイントペースで利下げを決めると見ている。また、24年末までに政策金利を9.50%にまで引き下げるか、または、9.50%を上回る可能性があると予想している。

 次回の金融政策決定会合は6月18-19日に開かれる予定。

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 ボベスパ<1325.T>、上場MSエマ<1681.T>、上場EM債<1566.T>

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