<新興国eye>ポーランド中銀、予想通り金利据え置き―8会合連続

新興国

2024/6/6 8:47

 ポーランド中銀は5日の金融政策委員会で、ディスインフレ(物価上昇率の低下)が続いているものの、インフレ再燃リスクがあるとして、主要政策金利の7日物レファレンス金利を5.75%に据え置くことを決めた。また、中銀はロンバート金利と再割引金利、公定歩合、預金金利もそれぞれ6.25%、5.80%、5.85%、5.25%と、いずれも据え置いた。市場の予想通りだった。

 中銀はコロナ禍後のインフレ急加速を受け、21年10月会合で9年5カ月ぶりに利上げに転じ、22年9月会合まで計11会合連続で利上げを継続。利上げ幅が計6.65ポイントに達したことから、翌10月会合で据え置きに転じた。23年7月会合まで10会合連続で据え置いたあと、同9月会合で3年ぶりに利下げに転換、同10月会合でも利下げを決めたが、インフレリスクを警戒して同11月会合で据え置きに転換。これで金利据え置きは8会合連続となる。

 中銀は声明文で、金利据え置きを決めた理由として、「景気回復が見られるものの、ポーランド経済の需要とコスト圧力は低く、弱い経済状況と海外のインフレ圧力低下の中で国内のインフレを抑制している」とした上で、前回5月会合と同様、「4-6月期のインフレ率は物価目標と一致する水準で推移すると思われる」とし、ディスインフレプロセス(インフレ低下基調)が続いていることを挙げた。

 ただ、中銀は、「今後数四半期はインフレの動向は財政・規制措置に加え、経済回復のペースや雇用市場の状況から影響を受けるため、かなりの不確実がある」とし、その上で、「エネルギー価格の上昇により、インフレ率が24年下期に大幅に上昇する可能性がある」、また、「中期的には、公務員給与の上昇などに起因する顕著な賃金上昇により、経済需要が刺激される」とし、賃金上昇がインフレ再燃リスク要因になっているとし、政策金利を据え置いたとしている。

 同国の5月のインフレ率は前年比2.5%上昇と、前月(4月)の同2.4%上昇を上回り、物価目標と一致した3月の2.0%上昇から伸びが加速した。ただ、23年2月の18.4%上昇をピークに低下傾向にある。最新の3月経済予測では、中銀は24年のインフレ率の見通しを2.8-4.3%上昇、25年を2.2-5.0%上昇、26年は1.5-4.3%上昇を予想している。

 また、今後の金融政策について、中銀は、「現在の政策金利水準が中期的に物価目標の達成に寄与すると判断している」とし、当面、金利を据え置く考えを示した。ただ、中銀は前回会合時と同様、「さらなる金融政策の決定はインフレと経済活動の見通しに関する今後の情報に依存する」とした上で、「インフレ率を中期的に物価目標にまで引き下げ、マクロ経済と金融の安定を確保するために必要なあらゆる措置を引き続き講じる」としている。

 市場では1-3月期GDP伸び率が前年比2.0%増と、賃金上昇により、個人消費が成長をけん引、前期の同1.0%増から加速したことから、中銀はディスインフレプロセスが長続きしないと警戒していることや、アダム・グラピンスキー総裁も先月、賃金の急上昇が利下げを阻む主な懸念材料と指摘しているため、金利は年内据え置かれる可能性が高いと見ている。同国では昨年末の現政権発足以降、公務員給与が20-30%引き上げられ、企業の賃金もここ2年超、ほぼ毎月2ケタペースで上昇している。

 次回の会合は7月3日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 上場EM債<1566.T>、上場MSエマ<1681.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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