<新興国eye>インドネシア中銀、予想通り金利据え置き―通貨ルピア安阻止狙い

新興国

2024/6/24 9:13

 インドネシア中央銀行(BI)は前週(20日)の理事会で、インフレ抑制と通貨ルピア相場を安定させるため、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を6.25%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。ただ、一部では0.25ポイントの利上げを予想していた。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.50%、翌日物貸出ファシリティー金利も7.00%と、いずれも据え置いた。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で利上げに転換、23年1月まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、同2月に金利据え置きに転換、同9月まで8会合連続で据え置いた。同10月に利上げに踏み切ったが、翌11月には据え置いた。24年3月まで5会合連続で金利を据え置いたが、ルピア相場の急落を受け、4月会合で再利上げを決めた。前回5月会合に再び金利据え置きに戻り、これで2会合連続となる。6.25%の金利は過去最高水準。

 2会合連続の据え置き決定について、中銀は声明文で、前回5月会合時と同様、「この決定は外国資本の流入とルピア相場の安定を維持することを含め、インフレ率を24年と25年に前年比1.5-3.5%上昇(中央値2.5%上昇)の物価目標の範囲内に抑制するための先制的かつ将来を見据えた措置」とし、ルピア相場の下落を阻止するためとしている。

 財政支出拡大による財政不均衡懸念などにより、6月はルピアが対ドルで1%下落、4年ぶり安値となり、アジア通貨の中で最弱となっている。このため、市場では中銀はルピア相場の安定のため、金利を高水準に維持しなければならなかったと見ている。

 中銀は声明文で、「ルピア相場は23年12月末の水準から5.92%下落した」とした上で、「企業の外貨需要の増大や将来の財政の持続可能性に対する懸念により、ルピア安圧力が引き起こされた」と懸念を示している

 他方、インフレ率は物価目標の許容レンジ(1.5-3.5%上昇)に収束しているため、今回の金利据え置きはルピア相場の安定が主な要因となっている。中銀はルピア安は輸入インフレを加速させるため、ルピア相場の安定はインフレ防止にもなると考えている。5月のインフレ率は前年比2.84%上昇と、4月の同3.00%上昇から減速、物価目標の許容レンジに入った。

 インフレ見通しについて、中銀は、「今後、24年のインフレ率は物価目標内で抑制されると見ており、コアインフレ率(5月は1.93%上昇)も物価目標内に抑制されたインフレ期待に沿って維持される」と楽観的に見ている。

 ペリー・ワルジヨ総裁は前回5月会合での会見で、ルピア相場のリスクについて、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げサイクル開始の遅れや中東情勢の不確実性を指摘している。総裁は、「米国のインフレ高止まりで米金利が長期にわたって上昇する可能性がある。このため、インドネシア中銀は引き続き注視している」とした上で、今後の金融政策について、「中銀の今後の金融政策は引き続きデータ依存になる」とし、金融政策は慎重になるとしている。

 市場ではルピア相場の下落圧力を阻止するため、今後1カ月は市場介入などの為替操作を行うが、それでも介入だけでは抑えきれない場合、一部では中銀はルピア相場の安定のため、利上げを検討する可能性があると見ている。

 また、中銀は今後の金融政策について、前回会合時と同様、「持続可能な経済成長を支援するため、金融(市場流動性)やマクロ・プルーデンスな政策(金融システムの安定を目指した政策)、決済システムのポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とした上で、「企業や家計への銀行融資を拡大するため、緩やかなマクロプルーデンス政策を継続する」としている。

 ルピア相場の安定のため、中銀はスポット市場での介入や、ルピアを決済に使う為替フォワード(先渡し)取引である「DNDF(ドメスティック・ノン・デリバラブル・フォワード)市場での介入を継続する。

 さらに、中銀が保有国債を裏付けとするルピア建ての証券(BIRS)と、23年11月17日から導入した外貨建て証券(BIFCS)の発行を通じ、短期金融市場を強化、海外からのポートフォリオ投資の魅力を高めていくとしている。現在、SBN(国債)は10年国債が7%超のプレミアム金利となっており、証券売却を通じ、外資の流入を高め、ルピア防衛を強化するとしている。

 次回の会合は7月16-17日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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