<新興国eye>トルコ中銀、予想通り金利据え置き―7-9月期まで金利据え置きの可能性

新興国

2024/7/1 9:30

 トルコ中央銀行は先週(6月27日)の金融政策決定会合で、通貨トルコリラの安定とインフレ抑制のため、主要政策金利である1週間物レポ金利を高水準にある50.0%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。

 中銀はエルカン前総裁の就任後初めて開かれた23年6月会合で、2年3カ月ぶりに利上げに転換。利上げサイクルは24年1月まで8会合連続で実施され、金利水準は計36.5ポイント上昇、18-19年のピーク(24.0%)を大幅に上回り、過去最高を更新したことから、2月に金利を据え置いた。3月会合で予想に反し、5.0ポイントの大幅利上げを決めたが、4月会合で据え置きに戻った。これで据え置きは3会合連続。

 中銀は会合後に発表した声明文で、金利据え置きを決めたことについて、前回会合時と同様、「金融政策の影響が景気とインフレに及んでくるまでのタイムラグ(時間差)を考慮し、金利を据え置いた。引き続きインフレリスクに非常に注意を払う」とし、当面、利上げによるインフレ抑制効果を見守りたい考えを示した。

 今後の金融政策についても前回会合時と同様、「毎月のインフレ率が大幅かつ持続的に低下し、インフレ期待が予測範囲に収束するまで、金融引き締めスタンスが維持される」とし、当分の間、金利を高水準に据え置く方針を確認した。ただ、「インフレ率が大幅かつ持続的に悪化することが予想される場合、金融政策スタンスは引き締められる」とし、追加利上げの選択肢を残した。

 インフレ見通しについては、中銀は前回会合時と同様、「サービスインフレは依然、高水準で粘り強いことに加え、インフレ期待や地政学的リスク(中東情勢)、食料品価格がインフレ圧力を維持している」とした。ただ、「金融引き締めスタンスや内需減速、トルコリラ上昇、インフレ期待の改善を通じ、24年下期にはディスインフレのプロセス(インフレの低下基調)に入る」との見方を依然、維持している。

 また、中銀は最新の5月インフレ率が前年比75.5%上昇と、前月(4月)の同69.8%上昇を上回り、7カ月連続で伸びが加速したことについて、「インフレ率の低下傾向は5月に一時的に停止した」と、インフレ加速は一過性との判断を示したことから、市場では中銀はインフレ率がピークに達したと判断、政策金利もピークに達し、これまでの利上げサイクルは終了した可能性があり、金利据え置きが7-9月期まで続いたあと、年末までに最初の利下げに転換すると予想している。

 市場ではトルコ経済の冷え込みが広がり始め、6月のインフレ率は同72%上昇近くに鈍化すると予想している。このため、短期的に追加利上げが検討される可能性は低いと見ている。

 また、中銀は今回の会合で、「信用市場と預金市場で予期せぬ展開があった場合、金融伝達メカニズムは追加のマクロプルーデンスな措置(金融システムの安定を目指した措置)によってサポートされる」とした。この点について、中銀は前回会合で、「(トルコリラ建ての)信用の伸びと預金の最近の動向を考慮、マクロ金融の安定を維持し、金融(引き締め)政策の伝達メカニズムを支援するため、追加措置を講じる」としている。

 また、中銀は前回会合で、「トルコリラ建て金融資産に対する強い内需や外需に起因する過剰流動性を不胎化(吸収)する」とし、金利据え置きが長期化する一方で、その間のインフレ抑制のため、マクロプルーデンスな政策に移る方針を示しており、今回の会合でも「不胎化措置を効果的に実施する」としている。

 市場では、中銀は今後、マクロプルーデンスな政策としては市中銀行が中銀に預ける準備預金の法定準備率(SRR)引き上げや財政均衡(歳出削減)などの金融引き締め措置を取る可能性があると見ている。最近、外国人投資家はトルコ中銀の金利据え置きによる金利高の維持やインフレ抑制を受け、トルコ国債の購入を強めていることが背景にある。

 次回の金融政策決定会合は7月23日に開かれる予定。

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上場MSエマ<1681.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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