<新興国eye>カンボジア公的債務統計報告書 債務状況は問題なし

新興国

2024/7/5 8:47

 6月12日、カンボジア経済財政省は、公的債務統計報告書(Cambodia Public Debt Statistical Bulletin)第22号を公表しました。2024年3月末現在のカンボジア政府の債務状況について詳細な統計により報告しています。

 2024年3月末の公的対外債務残高は、110億ドル(約1兆7380億円)と2023年12月末の111億8552万ドルから1.7%の減少となっています。国別では、中国が最大で39億9945万ドル(全体の36.4%)、以下、アジア開発銀行23億5480万ドル(21.4%)、世界銀行13億2886万ドル(12.1%)、日本12億1283万ドル(11.0%)、韓国5億6991万ドル(5.2%)等となっています。

 債務持続性分析を見てみると、2024年末予測で公的対外債務の現在価値の対GDP(国内総生産)比率は19.0%(基準値40%)、同対輸出比率29.1%(同180%)、債務返済比率(債務返済の対輸出比率)1.8%(同15%)、債務返済の対歳入比率7.8%(同18%)と、いずれも健全とされる基準値を大きく下回っており、全く問題ありません。ストレステストでも基準値を超えることは全くなく、対外債務については、カンボジアは大変な優等生ということができます。世界銀行・国際通貨基金の判定でも「低リスク国(青信号国)」に分類されています。

 新型コロナウイルス対策や世界的インフレで多額の財政支出を余儀なくされ、また、経済状況も悪化する中で、対外債務に苦しむ途上国も見られます。また、米国の金融緩和終了に伴うドル金利上昇やドル高によって、幾つかの新興国で懸念が高まっています。既に、スリランカが破たんし、パキスタンやラオスなども厳しい状況です。しかし、カンボジアは、債務の過半が日本や世界銀行・アジア開発銀行からの譲許的借款であることに加え、債務マネジメントをしっかり行ってきたため、対外債務についてはおおむね問題なく、急激な為替レートの変動や外貨危機の可能性も低いと言えます。いわゆる「債務の罠」に陥る可能性は現状では低いものの、特定国に偏り過ぎないようにバランスを取りつつ、引き続き公的債務を管理していくことが必要とみられます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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