<年末年始特集>ドル・円は小幅レンジが継続―ECB緩和見直しでユーロ・円上昇か(2)

為替

2019/12/30 18:11

<ドル・円の20年相場展望―トランプ再選の米大統領選挙を見据えあまり動かぬ展開に>

 19年は米中貿易協議をめぐり狭いレンジでもみ合ったが、20年の方向感はどうなるか。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジストの植野大作氏はFRB、ECB、日銀の政策金利が据え置かれる前提で、ドル・円予想レンジを1ドル=104-115円と予想。「一時的に105円を割り込む場面もあるかもしれないが、19年安値(104円46銭)以下は定着しない。日本企業の年度末の円転需要が見込まれる1-3月期が最安値圏とみる。

 米中通商協議も19年のような制裁関税と報復関税の応酬にはならず、話し合いによる舌戦モードに切り替わる。11月の大統領選挙までは様子見ムードが強まりそうだが、我々のメインシナリオはトランプ大統領再選。その場合、アンチ・ビジネス色が強い民主党候補への政権移譲が回避され、株高志向の強いトランプ大統領が再選されたことへの安堵感が広がる一方、トランプ政権2期目の対中政策への不透明感も意識され、ドル・円は上値を試すものの、極端なドル高・円安も起きないだろう」との見方を示している。

 また、ドル・円レンジは18年、19年と2年連続で10円以下と値動きが小幅だったが、20年もその傾向は続く可能性が高いという。「短期為替売買の主役である投機筋の売買興味が値動きの甘いドル・円から離れて値幅の大きい通貨ペアにシフトしており、ヘッドライン・ニュースに対するドル・円のリアクションは薄くなった。一方、日本国債に投資していた国内機関投資家は相次ぎ満期償還される資金の再投資先に苦慮しており、世界的に見て非常に貴重なプラスの金利が主要先進国で最も高めの水準で残っている米国債への投資を検討せざるを得ず、ドル・円から離れられない。他方、事業法人などが稼ぎ出す経常収支の多くは、海外での直接投資や証券投資で得た配当などの第一次所得収支であり、円転する必要がなければ現地で運用される。貿易収支は年々細っており、実需のドル・円取引も値幅を大きく動かすものにはならない」(植野氏)

 一方、JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長の佐々木融氏のドル・円予想レンジは106-113円。「年前半に米中貿易協議の第1段階合意の署名など年明けから両国の不透明感が後退し、ドル高・円安が進みやすいとみている。ただ、米国のインフレ率は上がりにくく、FRBが4-6月に1度利下げを行うとわれわれは予想している。基本的には1年を通じてレンジ内での上下動を予想しているが、大統領選前に不透明感から安値を付ける場面があるかもしれない」との見方を示している。

 また、佐々木氏はFRBが1回の利下げ、ECBと日銀は金融政策据え置きとみているが、日銀が政策を微修正する可能性も排除はできないという。「日銀は長期国債の買い入れ額について、保有残高の増加額年間約80兆円をメドとしているが、実際は20兆円程度しか増やせておらず、量的緩和の位置づけを見直すことが考えれる。このほか、短期金利マイナス、10年物国債金利ゼロ%とするイールドカーブ・コントロールのターゲットの年限を変えるか、あるいはETF(上場投資信託)の買い方を変えるかなど微修正を加える可能性も無いとは言えない」(佐々木氏)

<ユーロ・円の20年相場展望―ECB前総裁時代の過度な金融緩和を調整する動きか>

 ユーロ・円はECBの金融政策の方向性に左右されるが、20年はラガルド新総裁の手腕が試されそうだ。

 植野氏のユーロ・円予想レンジは1ユーロ=116-135円。「ラガルドECB総裁体制が本格的に稼働し、ドラギ前総裁の行き過ぎた金融緩和策の総点検と見直しを1年がかりでやるとみられる。深掘りし過ぎたマイナス金利の修正観測がユーロ高をうながす。ドル・円同様、1-3月期安値、10-12月期高値を想定しているが、19年よりもドイツ経済が持ち直してユーロ・円を支援する可能性も加味している」という。

 一方、佐々木氏の予想レンジは118-126円。「レンジの高安はドル・円と同時期とみている。ドラギ前総裁の政策を検証するなかで、ラガルド新総裁のスタンスは市場にとって前体制よりはタカ派的と映り、ユーロ高につながる可能性がある。あとは、英国のEU(欧州連合)離脱が年明け1月に決まり、移行期間が延長されず20年末に設定されると、英国から欧州に移住する人々が増え、ポンド売り・ユーロ買いがユーロ・円の上昇を促すシナリオもあり得る」としている。

提供:モーニングスター社

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