<無料公開>水道の老朽化対策急務

鋳鉄管、栗本鉄に続け!

 昨年は10月の台風19号を筆頭に、記録的な豪雨が大規模な水害をもたらした。政府は下水道の浸水対策に着手する方針を示す中、老朽化の進む水道管の更新も喫緊の課題となる。株式市場では既に水道管大手の日本鋳鉄管(5612)が急騰しているが、関連銘柄への物色の輪は今後も広がりそうだ。

 昨年12月には国土交通省と日本下水道協会が小委員会を立ち上げ、下水道の浸水対策について話し合った。今年6月までには議論を取りまとめる。台風19号では15都府県で浸水被害が発生し、水道管破損に伴う断水も多発した。

 水道設備は高度成長期に急激に普及したため、ここへきて一気に更新期を迎えている。法定耐用年数(40年)を過ぎた水道管の比率は2016年度時点で14.8%に達し、年々上昇傾向にある。更新比率はほぼ横ばいで推移しているが、年間2万件の漏水・破損事故が起きていることを踏まえると、早急な対応が求められる。

 また、水道管の耐震適合率は4割に届かないのが実情。このため、災害の際の断水リスクを全国規模で抱えている。こうした中、浄水場や水道管を取り巻く水道システム全体の見直しが迫られている。

 19年には水道設備の民営化や官民連携を促す改正水道法が施行され、宮城県では水道の運営権を民間企業に売却する「コンセッション方式」の導入が決まった。新たな企業の参入で活性化が見込めるほか、AI(人工知能)を使った水道の劣化個所の診断、IoT(モノのインターネット)を活用した管理の高度化といった新技術も活用され始めている。

 水道管の更新には耐震性能の高い「ダクタイル鋳鉄管」が多く使用され、クボタ(6326)や鋳鉄管、栗本鉄工所(5602)が高いシェアを持つ。株式市場ではこうした状況を手掛かりに、鋳鉄管の株価が7日に前日比300円ストップ高の1761円まで値上がり。昨年末からの上昇率は36%に達した。栗本鉄も上昇基調が続いている。

 一方、より軽量で施工性に優れた「配水用ポリエチレン管」への関心も高まる。実用化されてからの年数がまだ短く、耐震性能の検証が進んでいなかったものの、足元では実績を積み上げている。ポリエチレン管メーカーとしては積水化学工業(4204)が知られる。

前沢工、大盛工など狙い目

 注目銘柄は前沢工業(6489)。同社は水道用バルブなどのほか、上下水道の処理設備も手掛け、水道施設の更新需要の取り込みが期待される。今5月期第1四半期の受注高はバルブ事業が前年同期比52%増となったほか、水道関連施設を含む環境事業も同34%増に拡大した。PBR(株価純資産倍率)0.4倍と極端な割安圏に放置されており、事業環境の好転で一気に水準訂正が進む可能性がある。

 このほか、水道用給水装置の前沢給装工業(6485)は18年10月が大底の上昇トレンドを形成。水処理設備のメタウォーター(9551)も上下水道施設の更新需要の取り込みが期待される。管継ぎ手のテクノフレックス(3449・(2))、コンサルティングのNJS(2325)、IoTを使ったスマート水道メーターの愛知時計電機(7723)などもマークしたい。また、地中工事で大盛工業(1844・(2))も狙い目だ。

(市場動向取材班)

(イメージ画像提供:123RF)

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ