日電産、収益改善「WPR」計画に成果――コロナ禍乗り越え増益、EVモーターもすそ野広がる

ニュース

2020/7/21 18:42

 日本電産(6594)は新型コロナウイルスの感染拡大による過酷な事業環境を、これまで積み上げてきた原価改善のノウハウをフル活用することで乗り越えつつある。注力する車載モーターでは顧客の幅が広がり、拡大するEV(電気自動車)市場の取り込みも加速している。

リーマン超えの逆風危機感に

 「リーマン・ショックよりも悪い条件が、社員の危機感につながった」と話す日電産の永守重信会長。しかし、「日電産は不況に強い」――。

 リーマン・ショック当時初めて導入した「ダブル・プロフィット・レシオ(WPR)」は、内製化や材料費の見直し、固定費抑制などを通じて徹底的にコスト体質を強化するプロジェクト。この施策により、同社は逆風のたびに収益性を高めてきた。

 タイの洪水被害や米中貿易摩擦といった危機の際に、必ず発動してきたWPR。第4弾となる今回は、これまで以上に素早く成果が上がっている。蓄積してきた膨大なノウハウが物を言い、今3月期第1四半期(4~6月)の連結営業利益は市場予想を覆す増益(前年同期比2%増の281億円)を達成した。

 積極的なM&A(企業の合併・買収)で知られる同社だが、WPRは新たに加わったグループ会社にも浸透している。オムロン(6645)からの買収事業を含む車載モーター部門は第1四半期、とりわけ厳しい逆風を受けて売上が前年同期比で半減したにもかかわらず、黒字を確保した。

 4月に就任した、日産自動車(7201)出身の関潤新社長と永守会長の「ツートップ体制」も奏功しているもよう。いったん強くなった収益体質は、売上が回復する過程で真価を発揮する見通しだ。

「分水嶺」へ受注着々

 一方、EVやハイブリッド車向けのモーターも業容拡大へと突き進む。足元では中国を中心に世界15社からの受注を獲得したといい、着実に同社の展開がすそ野を広げている。その1社の中国の自動車メーカーの新モデルが現地のEV市場で米テスラ<TSLA>車に次ぐ販売台数となっていることも、日電産のモーターの存在感を高めている。

 かつてHDD(ハードディスク駆動装置)用の精密モーターでトップシェアに上り詰めた同社。ピーク時で40社近くいた競合も現在は1社しか残っておらず、日電産は圧倒的な勝ち組になった。市場では一時期、なかなか利益の出ないEVモーターの戦略に懐疑的な見方もあったが、永守会長に言わせればHDD用と変わらぬ道筋をたどっている。

 広がる顧客のすそ野は、かねてから永守会長が「EV化の分水嶺」になると指摘してきた、2025年へ向けての受注拡大への強力な足場だ。コロナ禍で改めて示した輝きが、株式市場でも今後の選別物色の大きな手掛かりになりそうだ。

※写真は、今年1月の決算説明会での日電産の永守会長

関連記事

  • ステラケミフ、戻り高値に接近

    ニュース

    2020/7/21 17:30

     高純度薬品のステラ ケミファ(4109)が急騰して5月の戻り高値に迫った。東海東京証券が3000円台後半の目標株価を打ち出し、買い人気を刺激した。 同証券は20日付でステラケミフのレーティングを中立・・・…続き

    1
  • 【セクター動向】探る――中国期待で機械が上昇、情報・通信も好調

    ニュース

    2020/7/21 17:30

     直近1カ月の東証1部の33業種のパフォーマンスは、コロナ・ショックからいち早く立ち上がった中国経済の回復期待を背景に機械株が躍動した。また、ソフトバンクグループ(9984)が上値を追った情報・通信も・・・…続き

    f
  • 広がる「テレ教育」に的

     テレワークの導入が広がる中で、企業の新たな課題になりつつあるのが新入社員や中途採用者への教育や、複雑な工程をたどる業務管理への取り組みだ。従来主流だったマンツーマンでの指導や実地のトレーニングが新型・・・…続き

    s
  • 中国設備投資に回復感

    ニュース

    2020/7/21 17:30

     新型コロナウイルスの収束後に経済が急速な復調を遂げた中国で、設備投資が勢いを強めた。決算発表シーズンを迎える日本企業の業況を占う上でもヒントとなり、4~6月はファナック(6954)などの受注が拡大し・・・…続き

    d

マーケット情報

▲ページTOPへ